投資

米ドルの覇権を支えてきた「オイルダラー体制」が消滅 「脱ドル」「新金融システム」構築へ向けて動き出したBRICS新通貨「The UNIT」の試み

「脱ドル」に向けて動き出すBRICS(写真:イメージマート)

「脱ドル」に向けて動き出すBRICS(写真:イメージマート)

 長らく世界の基軸通貨であった米ドルの信認が揺らぎつつある。歴史的に見ればドルの価値は下落を続けており、米ドルを支えてきた「オイルダラー体制」も終了を迎えた。不動産コンサルタント・長嶋修氏の新刊『グレートリセット後の世界をどう生きるか』(小学館新書)から、現行金融システムの2つのポイントを踏まえて、揺らぎつつあるドルの覇権の行方と「新金融システム」の台頭について解説する。

誰かの借金が誰かの資産に

 まず、「誰かが借金したところからお金の流通がスタートする」ということ。

 誰も借金しないのにこの世にお金が生まれることは、原理的にあり得ないわけです。したがって「誰かが借金してくれるほど、誰かの資産が増える」といった構図になっています。これが現行金融システムの、根本的な原理です。

 企業や家計が銀行からお金を借りているという体裁が取られているものの、実際には何もないところからお金が生み出されるという信用創造が行われているわけです。「国が借金してくれればくれるほど、家計や企業の資産が増える」ということになるわけです。

 金回りの仕組みにおける登場人物は「政府」「企業」「家計」の3つしかありませんから、三者の資産と負債を合計すると、ぴったりゼロになります。

 つまり現在は「政府がたくさん借金してくれるほど、企業や家計の資産が増える」といった構図になっているわけです。だから本当は「国が借金している」わけではなく、政府が借金をしており、その主な借金先は日本銀行。そしてその日銀は、日本国債の53.2%(2024年3月現在)を保有しています。国債というのは要するに「借用証書」のようなもので、日銀はその借用証書を担保としてお金を発行するというわけです。

 政府が借用証書としての国債発行することで次々とお金を生み出し、日銀と銀行がやり取りをしてお金と債務が生み出され、そこから企業や家計が経済活動を行い、両者に資産と負債が計上される中、企業や家計は資産が大幅に超過、その分は政府が借金を被るといった構図になっているのです。

 したがって「日本の債務は断トツのトップでGDPの2倍超え!」「国の借金が大変だ!」という事態の実情は「借金は国ではなく、政府がしている」「政府の借金から始めないと、市場にカネが回らない」ということなのです。

 そして「政府の借金」を語る際には、同時に「企業」「家計」の資産も論じないと意味がないのです。この三者のそれぞれの資産と負債を足し合わせると、日本は全体で約480兆円の「資産超過」となっています。ということは日本以外のどこかの国が「債務超過」となっており、世界中の資産と負債を足し合わせるとゼロになります。世界の中で日本は借金大国どころか、むしろ「資産大国」なのです。

 とはいえ、資産がいくらあってもお金が回らず滞り、流通しなければ経済は機能しません。1990年バブル崩壊以降、日本政府は金融引き締めや緊縮財政、消費増税など次々とカネが滞る政策を打ち出します。

 その結果は見ての通りで、日本は世界で断トツに経済成長しない国となり、国民の賃金は全く上がらなくなり、長いデフレに苦しみ「失われた30年」を経験します。政府が金を出さなくなったため企業や家計の需要が喚起されず、消費も投資もされなくなった結果です。

次のページ:金利という無限膨張システム

注目TOPIC

当サイトに記載されている内容はあくまでも投資の参考にしていただくためのものであり、実際の投資にあたっては読者ご自身の判断と責任において行って下さいますよう、お願い致します。 当サイトの掲載情報は細心の注意を払っておりますが、記載される全ての情報の正確性を保証するものではありません。万が一、トラブル等の損失が被っても損害等の保証は一切行っておりませんので、予めご了承下さい。