言葉を選ばず言えば、企業側から見て働かない、労働生産性の低い、あるいは組織によい影響を与えていないと判断される社員を、企業は抱え続けている必要があったのです。
例えば「終身雇用」。日本企業は、労働者に対して長期的な雇用を約束する終身雇用制度を取り入れました。これにより、労働者は安定した収入と生活を確保することができ、社会全体の安定にも寄与しました。
次に「年功序列」。終身雇用と並行して、年功序列に基づく昇給・昇進制度がありました。これにより、労働者は年齢とともに収入が増え、家庭の経済基盤が安定しました。
労働法制を変え、雇用のあり方を見直せば、企業の労働生産性は現在より格段に高まり、関係者の給与ももっと高くなっていたはずです。ここにも15:70:15の三極化の法則が働いており、多くの企業で「15%の猛烈に稼ぐ人」「70%の言われた事務的仕事だけをする人」「15%の全く働かない人」という構図が成立していると思われます。
ベーシックインカムの導入で、本当に全く働かない人は、1日中部屋にこもってゲームをしているかもしれません。それでもゲームに課金するといった経済活動には参加しているほか、衣食住の消費行動に貢献しています。ベーシックインカム分として投入されたマネーは経済活動に還元されますし、何より企業は「働かない人」を囲っておく必要がなくなり、労働生産性が格段に高まるでしょう。
※長嶋修・著『グレートリセット後の世界をどう生きるか』(小学館新書)より、一部抜粋して再構成
【プロフィール】
長嶋修(ながしま・おさむ)/1967年東京都生まれ。不動産コンサルタント。さくら事務所会長。NPO法人日本ホームインスペクターズ協会初代理事長。国交省・経産省の様々な委員を歴任。YouTubeチャンネル『長嶋修の日本と世界の未来を読む』では不動産だけではなく、国内外の政治、経済、金融、歴史などについても解説。広範な知識と深い洞察に基づいた的確な見立てが注目を集めている。マスコミ掲載やテレビ出演、講演等実績多数。著作に『不動産格差』(日経新聞出版)、『バブル再び~日経平均株価が4万円を超える日』(小学館新書)など。最新刊は『グレートリセット後の世界をどう生きるか~激変する金融、不動産市場』(小学館新書)。