藤井、岡山両氏が揃って注目したのは、売上高の40%超が米国でのものとなる住友林業だった。
グローバルリンクアドバイザーズ代表の戸松信博氏が目を向けるのは、住宅建設を支える建設機械関連だ。
「住宅供給の拡大で建設機械の需要が高まるのは必至で、北米での売上高比率が高いコマツや竹内製作所などは要注目です」(戸松氏)
藤井氏が2つめのポイントに挙げるのが、「防衛・経済安全保障」関連である。
「米中対立やロシアのウクライナ侵攻に伴って世界が二分されるなか、地政学リスクは高まり、『防衛』関連への関心は否応なく高まっている。
加えて、西側諸国にとっては世界の工場だった中国に取って代わるサプライチェーン(供給網)の構築は急務。なかでも生成AIの普及に不可欠な『半導体』は、経済安全保障の観点からも重要な戦略的物資であり、どちらが大統領になっても重要テーマであることに変わりはない。関連企業では、AIに不可欠で世界各地で開設が相次ぐデータセンター向けのロジック半導体を手がけるソシオネクストに注目しています」(藤井氏)
生成AIをめぐっては、グーグルやアマゾン・ドット・コム、マイクロソフト、アップルなど米巨大IT企業が鎬を削っている。
戸松氏は、「特に日本はAIを支える半導体の製造に関して、各工程で世界的に高いシェアを持つ企業が多い」として、別表にあるようなAIを支える半導体の製造に関して強いシェアを持つ日本企業に期待する。
円安から円高へ
そして、3つめのポイントは「円高」基調への反転だ。
米国がコロナ後のインフレ対策として利上げを進めてきたのとは対照的に、デフレ脱却に追われる日本は利上げできない状況が続き、日米金利差は拡大。それに伴って円安が続いてきた。
「だが、FRBが9月に利下げに転じて利下げサイクルに入った。一方、日銀は利上げに踏み出している。日銀は9月の金融政策決定会合で利上げは見送ったものの、方向性としては日米の金利差が縮小傾向にあり、円安になりにくく、むしろ“円高バイアス”がかかりやすい状況に転じたと見たほうがいいでしょう」(前出・藤井氏)
円安下では輸出関連銘柄が注目されてきたが、むしろこれからは輸入コストの低下などによる「円高メリット」が期待できる銘柄にも目を向けておいたほうがいいとの指摘だ。
ほかにも注目テーマはある。
米大統領選と言えば、低中所得者層向けの支援拡充を志向するリベラル派の民主党と、ビジネス界や富裕層向けの減税を重視する保守派の共和党の対決となってきた。
だが、実は株式市場ではどちらが勝っても同じ現象が起こってきたと前出の岡山氏は言う。
「トランプ氏が当選した2016年と、バイデン氏が当選した2020年の投票日から年末までのセクターごとの騰落率を見ると、エネルギー関連株と金融関連株はともに上昇しています。特にエネルギーをめぐるスタンスは正反対なのに、どちらが勝っても株価は同じ方向に動いている。
今回の大統領選後も同様の動きが予想されるので、エネルギー関連株と金融関連株は注目です」
藤井氏は大統領選後について、こう見ている。
「なにより考えておきたいのは、どちらの大統領になろうとも米議会を通さなければ政策は実行に移せないということ。米国経済を停滞させてしまうような政策の実現は考えにくく、方法論は違えども米国景気を浮揚させたいという方向に変わりはない。それが株価にとってポジティブな材料となるのは間違いない」
大統領選後の株高を見据えて、いまのうちから目を凝らしておきたい。
※週刊ポスト2024年10月11日号