新NISAによる投資ブームのなかでは、“オルカン”“S&P500”をはじめとするインデックス型投信が人気だが、検討すべき投資スタイルは他にもある。とりわけビギナーでも楽しめるやり方として知られているのが、「株主優待」を狙う投資法だ。
企業が一定の株を持つ株主に対して年に1~2回ほど、自社製品や金券などを送る株主優待は、諸外国にはほとんど見られない日本特有の制度だ。各企業が工夫を凝らして用意する優待品を楽しみとして、優待銘柄を買う個人投資家も少なくない。
ファイナンシャルプランナーの森田悦子氏は「今は株主優待銘柄の購入のチャンスとなるタイミングです」と語る。
「1年のなかで9月は、3月と並んで株主優待銘柄の権利確定日(優待取得の権利を保有する株主として登録される日)が多い月です。そのため9月末から10月初旬にかけては権利を確定させた株主が株を売ることで、株価が下がる銘柄が多い。安く投資できるチャンスなのです。もちろん、次に権利が確定する期限まで株を持ち続ける必要がありますが、最近は1年くらいの継続保有を条件とする銘柄が増えているので、その意味でもいいタイミングです」
投資のプロが選んだ最新の“お得な株主優待銘柄30”は別表の通り。
内容はQUOカードやカタログギフトなど自社の事業とは無関係の優待品を出す銘柄もあれば、自社製品の詰め合わせや自社サービスの割引券にしているケースもある。
「QUOカードは株主優待の鉄板ですが、投資初心者の場合は、自社ビジネスを優待品にする企業を選ぶのも手です。優待廃止リスクが少なく、かつ投資先の企業に親近感を得られるので、ビジネスの内容や業績構造を理解しやすくなります。モノだけでなく食事券やレジャーなど様々な優待があります」(森田氏)
かっぱ寿司などを展開するカッパ・クリエイトや丸亀製麺のトリドールホールディングスはグループ各店舗の様々な食事を楽しめる特典、ANAホールディングスや日本航空は割引航空券などが優待の内容となっている。
株式投資で8億円の資産を築いた“億り人”であるかんち氏は、高配当株投資の達人として知られるが、ポートフォリオには一定程度の優待銘柄も組み込み、生活コストを抑えるのに役立てているという。かんち氏は「株主優待をもらえる回数にも注目したい」と語る。
「優待を受けられるのは年1~2回という企業がほとんどですが、ホテル運営会社などを傘下に持つウェルス・マネジメントは年3回の優待があります。しかも3月の決算時には配当があり、1年に4回も楽しみがある」
国内で屋内型複合レジャー施設を運営するラウンドワンも年4回の株主優待がある企業だ。
100株だけ買えばいい
権利確定月は9月以外だと、12月や3月が多い。
「そうした銘柄のなかには、不動産大手のヒューリック(12月に権利確定)やメガネ大手のジンズホールディングス(8月に権利確定)など増益が続いているところもある。9月に権利が確定する銘柄以外にも目を向けてもいいでしょう」(森田氏)
こころトレード研究所の坂本慎太郎所長は優待銘柄購入のコツについてこう言う。
「1単元(100株)で優待制度がある銘柄が多いため、基本は100株ずつ保有するのがいちばん効率がいいとされます。
予算を考慮しながら分散して多くの銘柄を買ったほうが、楽しみも増えます。家計防衛の目的であれば、外食産業のなかでも自宅近くにある、よく利用する店舗がある、といった条件を満たすかも、優待銘柄選びの基準となってきます」
自分の生活スタイルや趣味趣向に合った優待銘柄を探すために、プロが厳選した別掲のリストが参考になるはずだ。
※週刊ポスト2024年10月11日号