お金にまつわる問題のなかでも、医療費は厄介だ。いくら家計を圧迫しても、「命には替えられない」と病院から言われるままに払わざるを得ないと考えがちだ。しかし、工夫次第で少しでも出費を削る方法はある。
高血圧や高脂血症、2型糖尿病など、いわゆる生活習慣病で医療機関を受診する場合、医療費節約の大きなカギとなるのが薬代だ。秋津医院院長で総合内科医の秋津壽男医師が言う。
「生活習慣病の多くは主に投薬で管理されています。患者さんは複数の疾患を合併することが多く、高齢になるほど多剤併用になります。その分、薬代がかさみますが、単に『節約したいから』と医師が処方した薬を勝手にやめるのは危険です」
2024年10月から、先発薬を希望する患者に「特別料金」を課す制度が始まる。特許が切れた先発薬1095品目の窓口負担が増え、後発薬(ジェネリック薬)との価格差の4分の1を保険適用外として患者の負担に上乗せするのだ。
「患者の希望であえて先発薬を使用する場合、ジェネリックとの価格差の25%が患者の支払う薬代に上乗せされます。使用感や好みなど、有効性と関係ない理由で先発薬を希望すると、薬代の自己負担が割高になるので要注意です」(秋津医師)
値上げする1095品目のなかには降圧剤や高脂血症の薬が多数含まれている。例えば降圧剤の第一選択薬の一つであるカルシウム拮抗剤では、先発薬「ノルバスク錠5mg」の薬価が1錠15.2円に対し、後発薬「アムロジピン錠5mg」は同10.1円。今後もノルバスク錠を飲み続ける場合、元々の差額に加えて1錠当たり約1.2円の上乗せ料金が発生する。
わずかな金額に見えるが、基本的に何年間も服用を続ける薬だけに、上乗せ分を含めた出費増は無視できない。さらに気をつけたいのが、「薬をもらう場所」だ。秋津医師が続ける。
「薬価はどこでも同じですが、『調剤基本料』は薬局の立地や扱う処方箋数などにより変わります。病院内にある敷地内薬局が3割負担で15円と最も安く、医療機関が近くにない街中の個店薬局が最も高い135円。さらに地域支援体制加算などの諸加算も踏まえると、敷地内薬局は薬価以外の処方にかかる費用が院外処方の3分の1程度に抑えられます」