腹七分目でマクロファージを適切に働かせる
脂肪細胞が分解されて炎症が起こっても、死滅した脂肪細胞をしっかりクリーニングできれば炎症はおさまっていきます。死滅した細胞を片付けるのがマクロファージです。マクロファージは老化した細胞や、アポトーシス(細胞死)した細胞を食べて掃除をするため「貪食細胞」と呼ばれます。マクロファージが活性化し働いていると、炎症は収まり慢性炎症にはなりません。ところが脂肪が溜まりすぎているとマクロファージがうまく働かないために炎症が残ってしまうのです。
慢性炎症を解消するためにはマクロファージを活性化させればいいと思うかもしれませんが、そう簡単な話ではありません。マクロファージには炎症を抑制する働きを担うものと、炎症を促進するものがあるので、やみくもに活性化すると炎症を加速させる可能性もあります。現在世界の研究者がマクロファージの機能や種類などについて研究を行なっていますが、詳細は解明されていません。
マクロファージを適切に働かせ、炎症の元を断ち切るために今できる最善の方法は、食べすぎをやめ、体内に過剰なエネルギーをため込まないことだといわれます。腹八分目、いや七分目で過剰なエネルギーが体内に留まらないようにすることが慢性炎症を解消させる方法です。
【プロフィール】
小川佳宏(おがわ・よしひろ)/1987年京都大学医学部卒業。1993 年京都大学大学院医学研究科博士課程修了。京大助手などを経て、2003年東京医科歯科大学難治疾患研究所教授。 2011年より同大学糖尿病。内分泌・代謝内科教授。内臓脂肪型肥満を背景として発症するメタボリックシンドロームや生活習慣病の成因解明と新しい治療戦略の確立をめざしている。日本肥満学会賞、日本内分泌学会研究奨励賞など多くの賞を受賞。九州大学大学院医学研究院副研究院長、東京医科歯科大学名誉教授。
取材・文/岩城レイ子