趣味の登山で何度も山梨県を訪れていたTさんは現地に知り合いも多く、その中のひとりから「畑を手伝ってほしい」と言われたことも影響した。
とはいえ、近所に住む70代の両親や都内にひとりで暮らす息子と離れるのは心配だった。しかも農業は未経験。課題が山積みだった。
「夫は頑固な人。“ぼくは山梨県で暮らすと決めたから、もし嫌なら離婚しよう”とまで言われました」
Mさんはこのとき、20年以上働いておらず、山梨県には知り合いすらいなかった。移住したとして収入が不安定な夫を支えるために何ができるだろう??必死で考えた末、趣味のアートフラワーの教室を開いてみようかと考えを変えた。
「これまで家事と育児しかしてこなかったので、これからの人生、好きなことをやるのもいいかもしれないと開き直りました」
Mさんが移住を了承すると、夫はすぐに退職の意向を会社に伝え、自宅の売却に取り掛かった。
「自宅の売却は2021年11月から始め、約1年もかかりました。夫も引き継ぎなどの事情で、退職したのは2022年11月。引っ越しの2週間前のことでした」
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