夕刊紙「夕刊フジ」が2025年1月31日発行号をもって休刊することが、発行元の産経新聞社から発表された。ネットニュースの隆盛に伴い、旧来の紙メディアは苦戦し続けているが、ついに「夕刊紙」の牙城が崩れたこととなる。夕刊紙に対して思い入れの深いネットニュース編集者の中川淳一郎氏が、紙メディアの行く末について考察する。
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ついに来ましたか……。1997年、サラリーマンになった私は、夕方や夜の電車で夕刊フジや日刊ゲンダイ、東京スポーツといった夕刊紙を読むオッサンを見ては「あぁ、ついにオレも社会人になった!」と思い、乗換駅でこれらの新聞を買ったことを覚えています。「夕刊紙を読むことこそ社会人の証」だと妙な考えを持っていたもので。何しろ学生時代は自転車通学で、毎日電車に乗る機会もなかったので、こうした光景を見ることはなかったのです。
また、これらの新聞は降りる人が網棚にヒョイッと置いては、その後別のオッサンがこの新聞を取り、熱心に読むというのも、よく見られた光景です。さらに、ホームのゴミ箱から夕刊紙をガサゴソと取り出しては「うひゃー、これでカネが浮いたわ!」みたいなことをやっている人もいた。電車の中で隣のサラリーマンが、日刊ゲンダイに連載されていたオットセイが登場する漫画「やる気まんまん」を読んでいたら、つい私も気になって、覗き込んでしまったものです。
これも平成初期の哀愁漂うサラリーマン風景でした。というわけで、夕刊紙というものは自分にとっては「社会人の象徴」的な存在だったため、それがなくなるのは一抹の寂しさを覚えるわけです。
今回、夕刊紙の雄・夕刊フジが休刊するということは、他の紙メディアも今後同様の道をたどる可能性があるということです。現に多くの新聞は夕刊をやめています。私自身、新聞社と出版社の人から「紙メディアは苦しい……」といったことはこの15年ほどずっと聞いてきました。だから、今残っている紙メディアは奇跡のような状況にあるといえましょう。
漫画雑誌や「月刊住職」といったニッチな専門誌はこれからも生き残るとは思いますが、一般的な新聞と雑誌はかなり苦しいのでは。しかも、2000年代前半のウェブメディア界の雄・ZAKZAKも更新を停止するというではありませんか。