ブランドを分けると「買いやすい」
同じ企業がブランドを分けて、異なるターゲットを獲得する例もある。上位ブランドの信頼性を売りに、下位ブランドを低価格にして手が出しやすい構造にすることだ。
最近の例でいうと、「チョコザップ」を思いつく。「ライザップ」の衝撃的な効果は認めつつ、あそこまで私はコミットできないだろうな、と考える人たちをうまく取り込んでいる。
携帯電話も、「au」と「UQモバイル」、「ソフトバンク」と「ワイモバイル」という形でメインとサブブランドを分けてターゲットに訴求している。
ユニクロとGU、ユナイテッドアローズとグリーンレーベルリラクシング、星野リゾートの星のや・界・リゾナーレ・OMOなど、すでに獲得した安心感のあるイメージを幅広いターゲット層に訴求し、「買いやすい」分け方を実現している。
注意したいことは下位ブランドのイメージに引っ張られて、上位ブランドのイメージが下がったり、自社ブランド内で顧客の奪い合いが起こったりしないようにすることだろう。
通常は、上位ブランドの良いイメージを下位ブランドに展開するパターンが多いが、利益率を高めるために、同じ企業内でさらなる「上位ブランド(プレミアムブランド)」を新たに作るケースもある。
トヨタとレクサス、サントリーのモルツとザ・プレミアム・モルツ、Newヤクルトとヤクルト1000、ローソンとナチュラルローソン、GAPとバナナ・リパブリックなどがそれに当たる。
もともと安心感や信頼感があって、付加価値が認められると、「プレミアム」のブランドを新たに作っても成功する可能性が出てくる。価格が高く利益率が向上するため、こちらも検討してみたい分け方だ。
【プロフィール】
下地寛也(しもじ・かんや)/コクヨ株式会社ワークスタイルコンサルタント、エスケイブレイン代表。1969年神戸市生まれ。1992年文房具・オフィス家具メーカーのコクヨに入社。顧客向け研修サービス、働き方改革コンサルティングサービスの企画など数多くのプロジェクトマネジメント業務に従事。未来の働き方を研究するワークスタイル研究所の所長などを経て、現在はコーポレートコミュニケーション室の室長としてコクヨグループのブランド戦略や組織風土改革の推進に取り組んでいる。同時に複業ワーカー(エスケイブレイン代表)としてのビジネススキルに関するセミナーや講演、YouTube動画配信などの活動も積極的に行っている。著書に『考える人のメモの技術』(ダイヤモンド社)、『プレゼンの語彙力』(KADOKAWA)、『一発OKが出る資料 簡単につくるコツ』(三笠書房)などがある。
※『「しやすい」の作り方』(サンマーク出版)より一部抜粋して再構成