手続きが膨大で面倒──相続にはそんなイメージが付きまとうが、簡単に済ませる制度をうまく活用すれば劇的に簡潔になる。「最短相続」を実現する制度活用術を解説する。
昨年父親を亡くしたAさん(62)は、「名義変更」と「解約」の手続きに難儀したと話す。
「父や相続人の戸(除)籍謄本や相続人の戸籍謄抄本を揃えて終わりでなく、法務局や金融機関で名義変更や解約をするたびに戸籍関係の書類一式の提出を求められました。ひとつの機関に書類の束を出すと、それが戻って来るまで別の機関の手続きがストップするので作業が遅々として進まない。金融機関の名義変更だけで3か月ほどかかりました」
銀行口座を相続した場合、名義変更の手続きをすると解約したのちに「払い戻し」、もしくは銀行口座を新たに作り「財産の移行」が行なわれる。手続きが完了するまでに概ね2週間~1か月はかかり、数行にわたるとそれだけで途方もない日数となる。
こうした手間を省き手続きのスピードアップを図るのが、法定相続情報一覧図の作成だ。
東京国際司法書士事務所代表でこれまで相続や借金に関して1万人以上の相談を受けてきた司法書士の鈴木敏弘氏が言う。
「法定相続情報一覧図は相続関係を証明する家系図のようなもの。一度作ってしまえば相続に関係する全員の戸籍謄本と住民票が不要になります」
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