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450億円詐取まで「あとほんの一歩が届きませんでした」…ゴールドマン・サックスとリーマン・ブラザーズから巨額資金をだまし取った日本人の“最後の誤算”

大規模なコンゲームの背景

 リーマンの前に金融界の「巨人」であるゴールドマン・サックスとの交渉が成立したことも大きかったという。

「今はエヌビディアやアップルなどIT関連企業が隆盛ですが、当時はゴールドマン、モルガンスタンレー、メリルリンチの3社が金融界では圧倒的な存在感を誇り、ほかの投資銀行に対する影響力が大きかった。そのなかでもナンバーワンのゴールドマンがポンと100億円を出したならば、リーマンも乗らざるを得なかったのでしょう」

 当時の時代背景も齋藤氏らに有利に働いたようだ。2007年8月、フランスのパリに本拠地を置く金融グループBNPパリバの金融不安に端を発する「パリバショック」が発生して、欧米の投資会社が揺れていた。

「アメリカでサブプライムローンが危機を迎え、投資会社は次の収益源を確保しなくてはならないと焦っていました。そこに短期間で巨額の利益を得られる丸紅保証の案件が現れ、ゴールドマンもリーマンも目がくらんで飛びついた。とくにゴールドマンには“素早く入れて素早く逃げる”という、生き馬の目を抜く投資銀行ならではの逃げ足の速さを感じました。

 加えて山中さんは当初丸紅の契約社員として働き、のちに正社員として採用された経歴の持ち主だったので常にノルマに追われていたし、ゴールドマンやリーマンの側にも移籍してきたばかりで手柄をあげたかった社員がいました。サブプライム危機の前夜という時代背景や、成果を求められるサラリーマンの心理が絡み合い、大規模なコン・ゲーム(投資芝居、信用詐欺)ができあがったのだと思います」

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