「肉がしっとり、柔らかく仕上がる」と「低温調理」で作る料理レシピが人気だ。専用の調理家電のほか、低温調理メニューの付いた電気圧力鍋なども販売されている。しかし、低温調理を「お湯に浸すだけ」「加熱時間を短くして放っておくだけ」の“ずぼら料理”と捉えてしまうと、食中毒のリスクは急上昇する。フリーライターの清水典之氏が、食品の安全性に詳しい科学ジャーナリストに話を聞いた。【シリーズ「“ずぼら料理”に潜むリスク」第3回】
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「フライパンで牛肉の表面を2分ずつ焼いたら、アルミホイルをかぶせて10分放置する」
「鶏肉をラップで巻いて、沸騰直前のお湯で5分ゆでて、そのまま30分放置」
人気のレシピ投稿サイトを検索すると、ローストビーフやゆで鶏などの肉料理を上のような「低温調理」のやり方で作るレシピが出てくる。「簡単」「手軽」といった面が強調されており、低温調理を「お湯に浸けて放置するだけ」などと“ずぼら料理”の一種のように捉えてしまう人がいるかもしれない。
しかし、食品の安全性に詳しい科学ジャーナリストの松永和紀氏はこうした家庭での「低温調理」についてこう注意を促す。
「牛肉は表面だけに菌が繁殖し、内部には入り込まないから、表面を焼けば安心と信じられていますが、決してそんなことはありません。食肉処理してから時間が経つと、表面の菌が内部にまで侵入していくと考えられています。一般にスーパーなどで売られている牛肉は、旨味を出すために10日程度は熟成されているので、表面だけ焼いて中は生のまま放置するという料理法は危険なので、やめましょう」(以下、「」のコメントは松永氏)
牛肉で繁殖する菌には、O-157など腸管出血性大腸菌があり、感染すると最悪、死に至る。2011年には、北陸の焼肉チェーン店が生の牛肉のユッケを提供して腸管出血性大腸菌による食中毒が発生し、181人が発症、5人が死亡する事件が起きた。