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【「禊ありき」批判も】高視聴率だったNスペ『ジャニー喜多川“アイドル帝国”の実像』が浮き彫りにした“NHKの現実” OB・鈴木祐司氏が指摘する「番組と組織に残る課題」

組織に残る課題

 同番組によりNHKが直面する組織の課題も浮き彫りになった。若泉元理事が文書で回答した内容が紹介された際、「平成21~23年度 NHK経営計画」の表紙が大写しになった。この3か年計画では、「NHKへの接触者率3年後80%」が掲げられた。

平成21~23年度NHK経営計画

平成21~23年度NHK経営計画

 接触者率とは、1週間に5分以上NHKを見たり・聞いたりした人の率を指す。80%は3年で3%上げる目標であり、放送だけでは難しいのでインターネット等を含めて「NHK放送外リーチ」を5%上げると謳ったのである。

 つまりPC・スマホの普及が進み、SNSなど情報流通のあり方が変貌する中、放送だけでは公共放送の存在感を維持できないという危機意識が前提だった。

 ところが若泉元理事の回答にある通り、現場は異なる解釈をした。ドラマや芸能番組では、ジャニーズとの関係を深めることで放送に若年層を惹きつけ、接触率を上げようとした。それが性加害の一助になってしまっていたのだが、実は肝心の「NHK放送リーチ」は上がっていない。

百歩譲ると、ジャニーズのお陰で接触者率の急落を緩和できたのかも知れない。ただしHUT(総世帯視聴率)が下落続きだったのを見てもわかる通り、残念ながら放送は後退の一途で、その枠組み内での努力だけでは全体の趨勢に抗うことはできなかったのである。 

この時代認識のなさが致命傷だが、話が大きくなり過ぎてしまったので元に話を戻そう。 性加害とその“隠蔽”の実態は一定程度明らかになったが、「メディアも加担」という批判にも応えるべく同Nスぺは始まったはずだ。ところが元テレ東担当者とNHK元理事が登場するくらいで、メディアの問題は曖昧なままで終わってしまった。

次のページ:「第2、第3のNスペを」

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