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【「禊ありき」批判も】高視聴率だったNスペ『ジャニー喜多川“アイドル帝国”の実像』が浮き彫りにした“NHKの現実” OB・鈴木祐司氏が指摘する「番組と組織に残る課題」

話題を呼ぶ内容だったが、課題も指摘されている(東京・渋谷区のNHK放送センター、時事通信フォト)

話題を呼ぶ内容だったが、課題も指摘されている(東京・渋谷区のNHK放送センター、時事通信フォト)

 10月20日放送のNHKスペシャル『ジャニー喜多川“アイドル帝国”の実像』の内容が話題を呼んでいる。SNSでは同番組についてさまざまな評価がなされているが、NHKの内情を知る有識者からは「課題の残る内容」との指摘がなされている。NHKでドキュメンタリー制作などに従事し、Nスペ事務局も経験したOBである次世代メディア研究所代表・鈴木祐司氏がマネーポストWEBに寄稿した。

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 注目のNスペが放送された。毎週日曜9時から放送される枠の中でも特に高い視聴率となり、SNSにも感想が大量にポストされた。内容について「かなり切り込んだ内容」と評価する声がある一方、「もっと踏み込めたはず」と批判する声も少なくない。

 かつてNHKで同番組を制作し、Nスペ事務局にも在籍したことのある筆者としては、今回の番組は“アイドル帝国”の実像を描くと同時に、NHKの現実を浮き彫りにしたと思える。

飛びっきりの視聴率

 日本エンタメ界のカリスマだったジャニー喜多川。その彼が築いた“アイドル帝国”の裏で起こっていた少年たちへの性加害に迫ったドキュメンタリーは、日曜Nスぺとして飛びっきりの視聴率となった。

10月20日のNスペの数字は「躍進」(筆者作成)

10月20日のNスペの数字は「躍進」(筆者作成)

 直近10週の平均と比べると、個人視聴率は134%。中でも数字を押し上げたのはF1(女性20~34歳)と「タレント芸能人に関心あり」層。前者は2.8倍、後者は2.2倍に及んだ。さらにM1(男性20~34歳)やコア層(13~49歳)も1.9倍と、普段見てもらえない若年層に注目された。

 番組の直撃取材を受けた若泉久朗・元NHK理事(現・スタートエンターテインメント顧問)は、文書回答で「幅広い世代層を獲得するために旧ジャニーズ事務所は重要なパートナーの一つで、NHKが支持される重要な役割」を担っていたと説明したが、皮肉なことに今回は、一連の不祥事を扱った番組がNHKの視聴者層拡大に大きく貢献した格好だ。

 この番組の視聴者層には、もう一つ特徴がある。普段NHKをよく見る3~4層(男女50歳以上)の数字は高くない。ところが役員・管理職で1.7倍となった。非管理職よりかなり上だ。番組の宣伝文に「“隠蔽”してきた実態」「メディアも加担」とあったが、企業のコンプライアンスのあり方に関心のある経営層にも注目されたのだろう。

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