レクサスが「サイズのヒエラルキーを超えた新たなコンパクト・ラグジュアリー」として投入した「LBX」。これまで“ボディの大きさ”によって形成されていたプレミアムカーの概念をコンパクトカーサイズの中で表現しようとしたブランド最小モデルで、いまやレクサス全体の新車販売台数の約25%を占めるほど順調に推移している。レクサスは、これまで幾度となく行われてきた“小さな高級車造り”の議論に対して、どんな答えを用意したのか。同車のどこに支持を集める秘密があるのか。今回のシリーズ「快適クルマ生活 乗ってみた、使ってみた」。自動車ライターの佐藤篤司氏がレクサスLBXをレポートする。
* * *
2023年11月に投入され、間もなく1年となる「レクサスLBX」。デビュー当初はベースがトヨタのコンパクトSUV「ヤリス・クロス」ということもあり、その“小さな高級車造り”を懸念する意見もありました。中には装備だけを豪華にして、ベースモデルの倍の価格をつけて販売か、などと辛辣なものまであったほど。あくまでも極論ですが、軽自動車のステアリングの真ん中に1カラットのダイヤを装備し、車両価格に100万円を上乗せしたからといって、それを小さな高級車とは呼ばないのと同じことかもしれません。
実は長年、こうした“小さな高級車造り”に関しての議論は、いつの時代も常について回っています。そして、そんなときに必ずといっていいほどサンプルのようにして取り上げられるのが、1960年代に登場した「バンデン・プラ・プリンセス」、通称「バンプラ」などと呼ばれる英国車です。
実はこのクルマ、「オールド・ミニ(以下、ミニ)」の世界的な成功を受けて開発された「ADO16シリーズ」の1台で、担当したエンジニアもミニと同じ「サー・アレック・イシゴニス」です。ミニ(2ドア)の開発コードが「ADO15」、それよりひとまわり大きな2ドアあるいは4ドアのボディが与えられたモデルが「ADO16」ということで、“ミニの上級シリーズ”といったポジションと捉えていいでしょう。