カナダのコンビニ大手であるアリマンタシォン・クシュタールから7兆円規模の買収提案を受けているセブン&アイ・ホールディングス(HD)。長く日本のコンビニ業界に王者として君臨してきたが、外資の買収提案など受けるなか、不振のイトーヨーカ堂などを中間持ち株会社に移し、稼ぎ頭のコンビニ事業に専念することを打ち出した。2025年にも社名を「セブン-イレブン・コーポレーション(仮)」に変更すると発表するなど、激変の最中にある。
背景には一強の王者であるセブンをファミリーマートとローソンが追撃する“三国志”のような競争激化もある。本誌・週刊ポスト(10月28日発売号)では、3社の最前線の現場での戦いを特集している。
「コンビニの父」と呼ばれたカリスマ経営者である鈴木敏文氏(セブン&アイHD前会長)が退任したのは2016年のことだが、以降、業界の様相は大きく変わった。ローソンは2017年に三菱商事傘下となり(今年からKDDIが共同出資)、ファミマは2018年に伊藤忠商事の子会社となった。
国内のコンビニ店舗数は2年連続で減少して飽和状態になりつつあるなか、経済ジャーナリストの河野圭祐氏は「ファミマは伊藤忠の強みを活かした新商品、ローソンはKDDIの知見や技術を活かした次世代コンビニの開発など新機軸で勝負を仕掛けている」と読み解く。
新しい“稼げる分野”とは
ファミマのプライベートブランド(PB)商品のなかでは、とりわけ「コンビニエンスウェア」が、素材やデザインに独自性を打ち出し、急な雨や出張時の需要だけだった衣料品を“稼げる分野”へと変身させる成功を収めた。
ローソンは、「プレミアムロールケーキ」や「バスチー」などのスイーツで女性客を開拓し、利益を押し上げる。また、宅配事業にも力を入れ、ウーバーイーツや「ワタミの宅食」との連携でシニア層の需要を取り込もうとしている。
迎え撃つセブンは、PB商品「セブンプレミアム」で他社を圧倒してきたが、最近は新たなヒット商品が不足しているとの指摘も出ている。一方、冷凍食品分野では「蒙古タンメン中本」や「すみれ」など有名店とのコラボ商品を展開し、「エコだ値シール」を導入して廃棄が迫った商品の値引きを開始するなど、新たな戦略にも打って出ている。
売上高の比較では、セブンが約5.3兆円(店舗数2.1万)で首位、ファミマが約3.3兆円(店舗数1.6万)で2位、ローソンが約2.9兆円(店舗数1.4万)で3位という状況だ。
特集では、全国で唯一と言っていい新規出店の激戦地・沖縄を現地ルポ。セブンが急速に出店を増やす一方、ここでは迎え撃つ立場のファミマやローソンも現地企業との連携などで工夫を凝らした商品を展開していた。そうした地域特性に応じた各社の戦略の違いは、アジア太平洋地域をはじめとする海外市場でも顕著に表われていた。各社の新たな戦略と競争の行方に、さらなる注目が集まることになりそうだ。