コロナ禍や円安も影響し、日本人の海外留学生の数は減少している。そんな中で留学先として注目を集めているのがマレーシアの大学だ。マレーシアの大学が選ばれる背景にはどのようなものがあるか。『中学受験 やってはいけない塾選び』が話題のノンフィクションライター・杉浦由美子氏がレポートする「費用面が魅力、マレーシアへの海外留学」。【前後編の前編】
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コロナ禍があけ海外渡航の機会も増えているが、円安の影響で、日本人の学生が海外の大学へ進学するのは費用面でハードルが高くなっている。一般的なアメリカの大学に進学をすれば学費は年間で350万円ほど、プラスして生活費があるので年に600万円ほどの費用がかかる。そのため、日本人留学生の数は減っていて、2018年度に11万5146人いたのが、2022年度には5万8162人となっている(日本学生支援機構調べ)。
その一方で、留学業界では今までになかった動向が見られる。高校や塾などを取材していると「マレーシアの大学が日本の高校へ指定校推薦の枠を配っている」という話をよく聞くようになった。最初は「マレーシアの定員割れしている大学が学生を集めようとしているのか」と思っていたが、調べてみるとそうでもないのだ。
日本の高校に指定校推薦枠を設けているのをよく見かけるテイラーズ大学は、クアラルンプールから車で40分ほどのセランゴール州スバンジャヤにあり、イギリスの大学評価機関のクアクアレリ・シモンズが公表している「QS世界大学ランキング」で2025年度は251位。日本の有名難関私大よりもランキングはずっと上の、人気のマレーシアの総合大学だ。
マレーシアは国策として、留学生の受け入れを推進している。日本政府が外国人観光客を歓迎し、観光大国を目指しているように、マレーシアは留学大国になろうとし、世界140ヵ国以上から年間15万人近い留学生を受け入れている。その一環として日本の高校にも指定校推薦枠を設けているわけだ。
10月に東京・恵比寿で行われたマレーシアの大学の合同説明会にも350名ほどの学生や保護者が集まっていた。千葉から来ているという高校生はこう話した。
「国内の大学では英語習得の効率が良いと思えないです。マレーシアの大学は世界ランキングでもそれなりの順位にあり、オールイングリッシュの授業が受けられるのが魅力です」
高校生の母親はこうコメントをする。
「費用の安さ、それが親からしたら一番重要なポイントです」
円安の今、留学は庶民には手が届きにくいものになっているが、マレーシアならば、比較的安い額で海外へ留学ができ、オールイングリッシュの授業が受けられる。そのため、日本からの留学生も増えているのだ。