各大学は学力試験以外で選抜を行う総合型選抜を取り入れ、入試の様相も変わってきている。その中で総合型選抜である、東大の学校推薦型選抜で合格した学生はどのような高校生活を送り、対策をしてきたのか。『中学受験 やってはいけない塾選び』が話題のノンフィクションライター・杉浦由美子氏がレポートする「推薦入試の現在地」。【全4回の第2回。第1回から読む】
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少子化の中でも、首都圏の中学受験は過熱を続けている。子どもの数が少ないからこそ、一人に投資される教育費は高くなり、幼い頃から塾に通って勉強をする子どもたちは、中学受験を終えても、中学1年から塾に通って大学受験対策をし、東京大学などの難関大学の受験もクリアしていく。
一方で地方では状況は異なる。たとえば東北地方では本格的な塾機能がほぼ仙台にしかない。そうしたなかで、山形県のトップ進学校、県立山形東高等学校も合格実績が伸びなやんでいたが、県の方針で探究学習を取りいれ、東大の推薦入試で4年連続で合格者を出すようになった。
今回は、山形東高校から推薦入試で東大に進学した学生を取材した。現在、東大の文科I類に在籍する野口凌さんだ。野口さんは山形東の探究科に属し、そこでの探究学習をまとめた論文を提出し、東大の推薦入試(後期教養学部)に合格した。
どんな探究学習を行ったのか。
山形東の探究科に在籍していた野口さんは、授業の一環でJICA(国際協力機構)の職員に話を聞く機会があった。その時、避難所で出される山形の郷土料理、芋煮に牛肉が入っているために、宗教上の理由で食べられない外国人がいるという問題が起きていると知った。ヒンドゥー教では牛肉は食べられないのだ。
「避難所で出される食事が食べられない人がいるという問題」の解決を試みることで、野口さんは多文化共生の可能性を探りはじめる。
実際に避難所の生活に参加したり、インタビュー調査をしたり、文献を読んだりと探究を進めていく。