すい臓が弱ると起こる血糖値スパイクのメカニズム
糖尿病を診断するためには、血液検査で空腹時血糖値とヘモグロビンA1cの数値を測定します。ヘモグロビンA1cは過去2~3か月の血糖値の平均をみるもので、血糖値の上昇・下降といった変動は把握できません。正常な血糖値の特徴は、上下の変動幅が緩やかで、それほど大きな山や谷を示すことなく100mg/dL前後で推移します。
ところが、食後急激に血糖値が上昇し、その後、急降下する波形を示すことがあります。これが「血糖値スパイク」と呼ばれる状態です。スパイクは「とげ」という意味で、波形がトゲのように鋭利な形をしていることからこう呼ばれています。
血糖値スパイクが起こる原因は、インスリンの分泌量が減少したり、分泌されるタイミングが少しですが遅れるためです。。食後に細胞がブドウ糖を取り込むことができず、血糖値が急激に上昇します。その後、急上昇した血糖値を下げようとインスリンが大量に分泌されるため、血糖値が急激に下がります。血糖値スパイクの原因は老化や肥満など様々ですが、すい臓の働きが弱くなったためと考えられています。
ただし、血糖値スパイクが起こっていたとしても、健診や人間ドックではなかなか発見されません。というのも、血液検査で測定される空腹時血糖値には現われないからで、別名「隠れ糖尿病」ともいわれます。血糖値スパイクの有無を検査するには、血糖値を継続的に測定する持続血糖測定器(CGM)が有効です。500円玉くらいの円形センサーを腕に付け、専用のリーダーやスマートフォンをかざし、皮下組織のブドウ糖濃度(血糖値に近似)を測定するという器具で、現在ではインターネットでも手軽に購入することができます。
【プロフィール】
西村理明(にしむら・りめい)/1991年東京慈恵会医科大学卒業。1997年東京慈恵会医科大学臨床系大学院(内科)修了。1998年Graduate School of Public Health, University of Pittsburgh修了(Master of Public Health取得)。東京慈恵会医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科助手などを経て、2019年より同大学主任教授。
取材・文/岩城レイ子