塾側が重視するのは「実績」より「成功体験」
都内で塾講師をしているAさん(40代/男性)は、「基本的には、無謀すぎる中学受験には挑戦させたくない」と言う。
「塾側が志望校のランクを下げるようにアドバイスするのは、確実に合格させて塾の実績をあげるためと言われることがありますが、実際のところ、実績よりもその子のためを思ってのことです。
もちろん挑戦することに意味はあると思いますし、上を狙うことで直前まで学力が伸びることも珍しくありません。ただ、『合格した』という成功体験を作ってあげたい気持ちが強いんです。中学で浪人は考えにくいですからね。
明確に行きたい学校がある場合は、もちろんその意思を尊重して滑り止めを提案する形を取りますが、頑なにそれを嫌がる親がいるのも現実で……。子供にとってトラウマになってしまいかねないし、案外多いのが、親が自分を責めてしまうケース。それもあって、1校だけは合格できるように組んであげたいというのが本音です」(Aさん)
「全落ち」の裏では、本人だけでなくさまざまな人の思いが交錯している。(了)