インフレが抑制される可能性
それが日本経済にはチャンスになる。第一生命経済研究所首席エコノミストの永濱利廣氏が語る。
「40年ぶりの世界的なインフレはロシアのウクライナ侵攻をきっかけに起きたわけです。欧米がロシアからの石油、天然ガスの輸入をストップし、小麦の大産地であるウクライナは戦争で輸出が難しくなりました。それが停戦や休戦に向かうとなれば、エネルギーや食糧の価格が落ち着いて、関連産業が活性化する可能性があります。
現実的には、停戦になったからといって欧米諸国がロシアの経済制裁を即解除することはないでしょう。しかし市場は先読みして動きます。戦争・紛争のエスカレーションの懸念がなくなれば価格は落ち着く展開があり得ます。制裁もゆくゆくは緩和に向かうという期待が出てくるからです」
日本のようにエネルギーや食糧の自給率が低い国は、国際的なエネルギー価格や食糧価格が低下すれば恩恵が大きいものとなる。
「原油価格が下がれば、天然ガスも下がるので、電気代・ガス代の引き下げにつながります。これは国内の多くの産業にとってプラスです。食糧価格の押し下げにもつながります。原油価格が下がれば、漁船の燃料費や冷凍設備のコスト、さらには野菜のビニールハウスの燃料費や電気代が安くなることで、魚介や野菜の価格も落ち着く可能性がある。
この数年の急激な物価上昇は円安が原因と言われてきましたが、実際は燃料高、食糧高の方がインフレに直接響いていました。ウクライナ戦争の停戦は、実質賃金低下など日本経済浮揚のネックとなってきたインフレの抑制につながる可能性があります」(永濱氏)
たとえ大統領選で米国の分断が深まろうと、世界経済は大きく動き出すと見られているのだ。
(後編に続く)
※週刊ポスト2024年11月22日号