「手取りを増やす」と訴えて総選挙で躍進した玉木雄一郎・国民民主党代表。その主張がサラリーマン層の共感と支持を呼んだのは、われわれの「手取り」が自民党政権で大きく減らされてきた現実があるからだ。【前後編の前編】
社会保険料で30%奪われる
玉木氏が自民党に突きつけた「手取り」を増やす具体的な策が、「年収の壁」(課税最低水準)を現在の103万円から178万円に引き上げることだ。
サラリーマンの所得税・住民税は、給料(年収)から「基礎控除」や「給与所得控除」などを差し引いた金額に対して課税される。
この基礎控除を増やして「年収の壁」を178万円に引き上げれば、年収178万円以下の人が税金ゼロになるだけでなく、年収300万円なら税金の減少で手取りが11.3万円増え、年収600万円なら同じく手取りが15.2万円増と、すべての年収で手取りがアップするのだ。
これに対して政府は、玉木氏の要求を実施すれば所得税・住民税合わせて7.6兆円も税収が減るという試算を発表した。与党内には、「そんな財源はない」と反対論が強い。
だが、これまでにサラリーマンが手取りをどれだけ減らされてきたかを見ると、玉木氏の主張は当然だとわかる。
経済ジャーナリストの荻原博子氏が指摘する。
「サラリーマンの課税最低水準はこの30年あまり103万円のまま変わっていません。しかし、その間、給料から天引きされる社会保険料はどんどん引き上げられ、税額が低くなる各種控除が次々に廃止された。国民に見えにくい形で巧妙に負担が増やされ、知らず知らずのうちに手取りが大きく減らされてきたのです」