住まい・不動産

【イラストで解説】数百万円かけた浴室リフォームの落とし穴 専門家が「浅い浴槽は逆に危険」と指摘するワケ

浅い浴槽に交換したら風呂から出られない

 とりわけ失敗事例が多いのが浴室だという。

 断熱性能の高いユニットバスに替えることや、風呂場での転倒防止策を施すことは長く住める家作りにつながる。しかし、盲点がある。

浅い浴槽は転倒リスクが上がることも

浅い浴槽は転倒リスクが上がることも

 昨年、古い浴室をユニットバスにリフォームした埼玉県在住のAさん(65)が語る。

「築40年以上の自宅の風呂はタイル張りで床が冷たく、昔ながらのステンレスの浴槽は底が深くて入浴時に何度も転倒しそうになりました。そこで100万円かけてユニットバスに改修し、転倒防止のために浅めの浴槽にしたのですが、肩まで浸かるには浴槽に寝転がる必要があり、起き上がるのに一苦労。浴槽も大きく湯船で体が浮いてしまい、浴槽の縁に掴まっていないと危ないのです。もっと慎重に検討するべきだったと後悔しています」

 前出の尾間氏が言う。

「浅い浴槽の方が転倒せず安全だろうと考える人が多いですが、かえって体への負担が増しやすい。サイズが大きい洋式のバスタブのようなタイプは、全身で浸かるには仰向けに近い体勢で入浴することになる(イラスト参照)。足腰が弱ると起き上がることが難しく、浴槽から出るのに苦労します。最悪、溺れてしまうリスクもあります」

 一般的に浴槽は50~55センチ程度の深さがあれば肩まで浸かれるという。

「通常の深さの浴槽で不安を感じる場合、踏み台や手すりの設置が効果的ですが、握力が弱ってくると手が滑りやすいので、普通の持ち手の手すりでは不充分です。手すりに滑り止めを施したり、縁を掴める形状の浴槽を選ぶと起き上がりが楽になります」(同前)

 浴槽をリフォームする際はショールームで下見をするなど、無駄な改修にならないように情報収集をしておきたい。

※週刊ポスト2024年11月22日号

一級建築士でリフォーム事情に精通する尾間紫氏(本人提供)

一級建築士でリフォーム事情に精通する尾間紫氏(本人提供)

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