中川淳一郎のビールと仕事がある幸せ

佐々木朗希メジャー挑戦に批判噴出も「時代の制度が追いついていないだけでは?」の指摘 「野茂英雄の時も否定されまくっていた」

トルネード投法でメジャーを席巻した野茂英雄(時事通信フォト)

トルネード投法でメジャーを席巻した野茂英雄(時事通信フォト)

時代の「制度」が当人の思いと実力に追いついていない

 その後の手のひら返しは皆さんご承知の通り。ドジャースで大成功をおさめ、オールスターでは先発登板、「NOMOマニア」と呼ばれる熱狂的ファンも誕生し、1995年の新人王に輝くのです。NHKは野茂の登板試合を生中継し、各局のスポーツニュースでも野茂が投げた日はドジャースの試合に時間をたくさん割く。

 その後、次々と日本人選手がMLBで活躍するようになり、FA権がなくてもポスティング入札で挑戦できる制度も誕生しました。要するに、野茂にしても佐々木にしても、その時代の「制度」が本人の思いと実力に追いついていないんですよ。

 野茂は引退せざるを得ず、佐々木の場合、「青田買いを避けるべく、25歳以下の選手がポスティングにかけられた場合、マイナー契約となる」ルールにより、譲渡金は安く抑えられてしまう。佐々木は高校時代からメジャー志向を表明していただけに、MLB側と協議をし、来たる挑戦時に備えて「23歳ルール」に変更することもできたのではなかろうか。少なくとも、今後メジャー志望を表明する高校生や大学生は間違いなく出てくるだろうし、佐々木の説得が無理だと感じたのであれば、制度を変えれば良かったのです。

 というか、2017年オフ、ポスティングでエンゼルス入りした大谷翔平の場合も「25歳ルール」が適用されただけに、この段階で異論が出てもおかしくなかったのでは。時間は十分にあったんですよ。ちなみに大谷の場合は、日本一に貢献しMVPも獲得するなどしていたため、23歳時でのポスティング移籍でもそこまで反発はありませんでした。

 佐々木の残した実績より上、ということでファンや球団は快く送り出したのでしょうが、「実績が足りない!」と部外者が批判するのはお門違い。結局多くのMLB球団がスカウティングの結果、佐々木を評価しているわけなので、彼ら同様「これからの実績に期待する」スタンスを、我々ファン及び野次馬も取った方がいいのではないでしょうか。

【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、大手広告会社に入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など。最新刊は倉田真由美氏との共著『非国民と呼ばれても コロナ騒動の正体』(大洋図書)。

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