転売目的の万引きは少ない?
昔から万引きの多い場所の一つに書店やCD/DVDショップがあった。書籍やCD、DVDを併売するレンタルビデオ店もご多分に漏れないスポットだったが、若者世代の書籍離れ、CD/DVD離れが進むなか、中高年による“成人向けコンテンツ“の万引き被害が大きくなっている、とSさんはその実態を明かす。
Sさんの店舗では、成人向けコンテンツ万引き犯のほとんどが「40代以上の中高年男性」だ。なぜ中高年に集中するのか。Sさんは「そもそも、再生デバイスを持っているのが中高年に多いからではないでしょうか」と語る。
「昨今はサブスクが主流となって、特に若い世代ではDVDを再生する機器を持っていない人も増えている。ディスクドライブ非搭載のPCを使っている人も多い。つまり『再生できなければ万引きする必要がない』ということだと思います。
成人向けコンテンツの万引き犯は、“自分用”に盗む人がとても多いんです。一般作品であれば、フリマサイトなどで転売して利益を得る目的のケースもあるでしょうが、成人向けコンテンツの場合は違う。『お金を払いたくない』『会計しているところを誰かに見られたくない』といった理由で盗む人がほとんどです」
視聴用のプレイヤーまで盗まれた
単純に「欲しかったから」という動機で万引きする中高年層。なかには盗んだDVDをファイルにまとめてコレクションしていた万引き犯もいたという。
「40代の男性が、未会計の成人向けDVD5枚を店外に持ち出したとのことで現行犯逮捕されました。その後、警察が男性の自宅を調べたところ、ファイリングされた大量の成人向けDVDが発見されたんです。総額は仕入れ値で150万円以上だったと聞いています」
さらには、視聴用のプレイヤーまで盗んだ人もいるという。
「店内には販促用の映像を再生するプレイヤーを設置しているのですが、それがある時盗まれたんです。監視カメラを確認して犯人を特定したところ、常連客の60代男性であることが発覚しました。しかもその人は、後日、成人向けDVDの万引きで現行犯逮捕されたんです。盗んだDVDを盗んだプレイヤーで視聴していたようで、これにはスタッフ一同あきれ果てていました」
レンタルビデオ店で中高年たちが成人向けコンテンツの万引きをしている現実があるわけだが、そこに拍車をかけている問題がある。後編記事では、万引きの“温床”となるセルフレジ事情について紹介する。
■後編記事:中高年が好む成人向けDVD、“好都合”なはずのセルフレジ導入でかえって万引きが増える皮肉 店側も対策を講じ現行犯逮捕も