今後米国では歴史上稀にみる大規模な行財政改革が行われる可能性が見えてきた。トランプ次期大統領は11月12日、「政府効率化省(Department Of Government Efficiency:DOGE)」を新設し、トップには、イーロン・マスク氏とインド系実業家で若き共和党大統領候補として人気を博したヴィヴェク・ラマスワミ氏を起用すると発表した。
トランプ氏はDOGEを設立する目的について 「官僚機構を廃止除外し、多くの余計な監督管理、浪費支出を削減し、政府機構を整備し立て直す」などと発言している。「米国を救う運動」を展開するためには、公務員体系と政府支出構造を全面的に改革することが重要だと説明している。
イーロン・マスク氏は11月13日、XにおいてDOGEの名称でアカウントを作り、そこで政府支出の無駄について投稿している。たとえば11月18日の投稿では、政府が行っている無駄な研究の具体例として“テキーラもしくはジンがサンフィッシュ(ブラックバスなど肉食性淡水魚の総称)の攻撃性を高めるかどうかに10万ドル”、“コカインが日本のうずらに対してより性活動を積極的にさせるかどうかに100万ドル弱”、あるいは“アポロ計画における月面着陸の正確な表現などに関して75万ドル”を支出していると記している。
中には“ペンタゴンは8240億ドルの支出について完全に説明することができない”、“2023年の政府支出計画の内2360億ドルが不当な支出である”とか“2000億ドルの新型コロナ救済資金は詐欺である”など、やや乱暴な表現で、大きな金額の無駄を指摘したりもしている。
政府予算から2兆ドルを削減する
11月23日のツイートでは“米国は現在、超高速で破産に向かっている”と題して、財政状況などのデータを提示している。それによれば、2023年の政府支出は6兆1600億ドルであるのに対して収入は4兆4700億ドルしかない。財政赤字は1兆6900億ドルに達しており、2001年の黒字を最後にずっと赤字状態が続いていると指摘している。
債務における国債の比率が高まり続ける中でパンデミックが発生、それへの対応として大量の国債を発行したものの、経済の回復速度を超えて債務が増加している。FRB(連邦準備制度理事会)はインフレ対策として金利を引き上げたがそれにより、支払利息が増えている。さらに、FRBは国債を売却、金融システムの正常化を進めたことで、長期国債に金利上昇圧力がかかった。
“現在428機関ある中で99機関を残せば十分だ”、“政府予算から少なくとも2兆ドルを削減する”などと、具体的な目標を示している。