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大前研一「ビジネス新大陸」の歩き方

生成AI時代の“教育後進国”ニッポン デジタル教科書導入、プログラミング教育必修化でも人材育成に期待できないワケ

フェイクニュースの問題を解説する教科書。デジタル教科書のメリット・デメリットとは?(時事通信フォト)

フェイクニュースの問題を解説する教科書。デジタル教科書のメリット・デメリットとは?(時事通信フォト)

 チャットGPTをはじめとする「生成AI」の進化を受けて、企業の間ではプログラマーよりもAIに対して正しい質問をする「プロンプト(指示・要求)・エンジニア」を大量に養成しようという動きが広がった。しかし、生成AIがさらなる進化を続ける中で、もはやプロンプトすら入力する必要がなくなるかもしれないという。では、AIにどんな指示を出せばいいのか? そして、「正解がない世界」で、これから大人になる子供たちに何を教えればいいのか──。最新刊『新版 第4の波 AI・スマホ革命の本質』が話題の大前研一氏が解説する。

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 もはやAIに対する「プロンプト」の必要すらなくなる──チャットGPTの登場以前に、このような事態を予測した人はいなかった。しかし、AI・スマホ革命の進展を見ていれば、次のフェーズは予測可能である。それが「第4の波」だ。

 拙著『新版 第4の波』で解説するように、アメリカの未来学者で畏友だったアルビン・トフラー氏は1980年、これから情報革命による「第3の波」が到来し、世界は工業化社会からIT社会に移行すると予測したが、その波では前半で大量雇用、後半で大量解雇が起きた。それに倣えば、2022年秋以降にアメリカの巨大IT企業が相次ぎ大量解雇に踏み切ったのは「第4の波」の後半の始まりであり、後述するIT業界の大リストラはこれからが本番と考えるべきだろう。

「第4の波」のイメージ図

「第4の波」のイメージ図

 では、生成AI隆盛の中で、子供たちに何を教えればよいのか? それは「質問する力」である。先生が「答え」を教えるのではなく、子供たちが自分の頭で考えて質問を繰り返し、クラスメイトと議論しながら答えを探し続ける姿勢と能力を育まねばならないのだ。

 私は2003年に『質問する力』(文藝春秋)という本を上梓した。その趣旨は、前提条件などを疑って「質問する力」こそが人生やビジネスにとって最大の武器になる、というものだ。21世紀は「答えのない時代」であり、不変の「正解」はない。だから、いま求められているのは、まさに答えを見つけるための「質問する力」なのである。

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