物語が足りなかった衆院選の影響
あと、齋藤さんが再選したのは、告示から投票の間に衆議院選挙があったことも大きかったんじゃないかな。与野党逆転なるか!?とかいいながら、結局のところ、衆議院選挙は血湧き肉躍るイベントにはならなかったよね。早い話、物語が足りなかったのよ。
そこへいくと、駅前にひとり立つ陰キャの齋藤さんはどうよ。どん底を絵に描いたようじゃないの。そこから少しずつ巻き返して、気がついたときはテッペンに立っていた。キャーッ、やったぁー、ばんさーい、って、こういうリアルな物語を望む人がいても不思議じゃないって。「現実感がなく映画のようだった」とご本人も選挙後のインタビューで答えているもの。
それと、もうひとつ。私の感想を言ってもいい? それは今年の天候よ。「おねだり、パワハラ」と騒がれていたときはクーラーをガンガンかけていた真夏日で、うだるような暑さが長く続いたんだよね。それが兵庫県知事選投票日の11月17日あたりはすっかり秋日和。齋藤さんが追い詰められていたのははるか過去。兵庫県民が大きな場面転換を受け入れた背景には、いつもより遅い季節の変わり目があったからじゃないかしら。
でね。日本中から注目されている齋藤県政の第二幕だけど、私はちょっと危うさを感じているんだ。というのも彼、前は認めていたのに、当選後は「20m歩かされたくらいで怒りませんよ」と言い出したんだよね。極め付きは失職前の答弁で、「どんなふうに部下を叱責したのですか?」と聞かれると、必ず「それはダメなんじゃないですかと指導しました」と、とてもマイルドな言い回しで言う。
人は何を言うかじゃない。どんな口調で言うかで、伝わり方が天と地ほど違うと思っている私は、こういう変換をする人が信用できないんだわ。
「人は変わる」という人もいるし、「人は変わらない」という人もいる。さあ、齋藤元彦さんはどっち? 日本中の人が見てるよ。
【プロフィール】
「オバ記者」こと野原広子/1957年、茨城県生まれ。空中ブランコ、富士登山など、体験取材を得意とする。
※女性セブン2024年12月12日号