5年に一度の年金制度の見直しで、60歳以上で働きながら年金を受け取る人の「支給停止」をめぐるルール改正が行われようとしている。シニア世代の就業率が増えるなか注目されているのは、稼ぐと年金がカットされてしまう「在職老齢年金」制度の抜本的な見直しだ。
現行の制度では、「給料+年金(厚生年金の報酬比例部分)」が月50万円を超えると、超過分の半分の年金が減額(支給停止)される。厚労省が社会保障審議会年金部会に提出した資料によると、今回の年金改正では、年金支給停止になる「給料+年金」の金額を現行の50万円から、62万円または71万円に引き上げる案、完全廃止してどれだけ稼いでも年金カットされない案の3つが提案されたのだ。
「年金博士」こと社会保険労務士の北村庄吾氏は、今回の変更は「多くの人が65歳以降も年金支給停止を気にせずに稼げるようになり、給料と年金のトータルの収入も増える」と指摘する。
「年金減額の壁」による“働き控え”を気にせず働けるようになると、給料が増加することに加え、年金額が毎年少しずつ増えていくという「二重の増額」効果があることも見逃せない。
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