主に首都圏で「中学受験ブーム」が過熱する背景には、「公立中→高校受験」という王道ルートについての情報が少ないことがあるのではないか。私立の中高一貫校は、基本的に受験勉強して大学を目指す進学校が目立つが、一方の公立高校にはさまざまな専門科があり、その専門性を活かした進学ルートも用意されている。フリーライターの清水典之氏が、受験情報の専門家への取材を基にレポートするシリーズ「“中学受験神話”に騙されるな」、進路の選択肢も多様な公立高校の現在について紹介する。【第4回】
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現在の大学入試は「指定校推薦・公募推薦」や「総合型選抜(旧AO入試)」の割合が高まっている。文部科学省の「大学入学者選抜の実態の把握及び分析等に関する調査研究」によると、2023年度の国公立・私立大の入試は、「一般選抜(一般入試)」が48.9%、「学校推薦型選抜(指定校制と公募制)」が30.5%、「総合型選抜(旧AO入試)」が20.6%だった(選抜区分数別)。入学者数別に見ても、大学全体ですでに一般入試での入学者は5割を割り込んでいる(国立大は約8割、公立大は約7割が一般入試での入学だった)。
指定校推薦による選抜を実施しているのは、ごく一部の公立大学を除き、ほとんどが私立大学である。大学側が指定した高校ごとに推薦人数を割り当て、高校側は推薦を希望する生徒を評定(高校3年間の内申点)や部活動の成績などで選考し、学校長が大学側に推薦する。面接や小論文などが課されることはあるが、推薦されればほぼ合格が確定するという制度だ。公募制推薦は、指定校でなくても、大学側の示す評定などの基準を満たしていれば学校長が推薦して出願できるが、合格するとは限らない。
一方、総合型選抜(旧AO入試)は学校の推薦が不要で、大学側が求める学生であることを自己推薦する入試だ。書類審査や面接に加え、小論文やプレゼンを課したり、資格・検定試験の成績、共通テストの成績などを提出させたりと選抜方法は大学によってさまざま。不合格になることも多々ある。
高校の成績でほぼ合格が確定する指定校推薦は、一発入試は苦手だが努力家といった子にとっては魅力的だ。指定推薦枠は公立高校にも私立高校にも割り当てられているが、公立高校は推薦枠をあまり積極的に公表しないので、詳細はあまり知られていない。