腸と腎臓をいたわり、幸福寿命を延ばす
腸は血液を最も多く使う臓器で、全体の30%を占めます。腸に次いで血液を使うのが腎臓で20%、脳はその半分の10%しか使っていません。健康を維持するためには、多くの血液を使って働く腸と腎臓に楽にしてあげる必要があります。
人間の体は、日々の温度変化やストレス、ウイルス感染、運動不足、睡眠不足などにさらされ、調子が悪くなったり元気になったりという体調のサイクルを繰り返しています。メタボリックドミノを防ぎ、生活習慣病を予防するためには、体調のブレをできるだけ小さくして、日々の生活のリズムを一定にする必要があります。前述した腸脳連関や腎脳連関から考えても、腸と腎臓をいたわり大切にすることは、病気の発症を防ぐだけでなく、脳を活性化して幸福感を育むことにつながります。健康と幸福はとても近い関係にありますが、必ずしも同じではありません。健康であっても不幸だと思う人もいれば、大病を患っても溌溂と生きている人がいます。
日々の生活を大事にして、周囲への感謝の気持ちを忘れなければ、幸福を感じ、意欲的に生きることができます。私はこれを「幸福寿命」と呼んでいますが、「幸福寿命」を長くするためにも腸と腎臓を安定的に良好な状態にする必要があるのです。
【プロフィール】
伊藤裕(いとう・ひろし)/1983年京都大学医学部卒業。米ハーバード大学・米スタンフォード大学医学部博士研究員、京都大学大学院医学研究科助教授などを経て、2006年慶應義塾大学医学部内科学(腎臓・内分泌・代謝)教授に就任。メタボと生活習慣病、心臓病、腎臓病、脳卒中の関連を明らかにした“メタボリックドミノ”を世界で初めて提唱した。
取材・文/岩城レイ子