話が通じないのはネット民とテレビ民にしても同じ
そういう私も2年前、母親の介護で約半年間、田舎暮らしをしたら驚きの連続だったもの。
たとえば朝6時過ぎに「おはよう」と玄関に立つ年寄りがいる。「こんな時間に起きられないよ」と言って、わかってもらうまでに何度やり取りしたか。同世代でもそう。「いんだっぺ(居るんでしょう)」とアポなしで来るから「どうしたの?」と聞くと、「居ると思ったから来たのよ」とどこ吹く風だ。
この一件だけでも、都会育ち、または長く都会で暮らしている人は「信じられないっ」と目をむくわよ。でも田舎の人にしてみれば、祖父母や親の代から延々と続いているローカルルール。風習や慣習だから、よそ者がそれに合わせるしかない。で、問題なのは、その風習・慣習・常識が議会でも幅を利かせていること。政治家としての能力差より家柄の差で議長や町長が決まり、それが地方衰退の原因の1つだとしたらどうよ。
なんて話をしても、ピンとこない人はこない。結果、いやな思いが残るだけだから、私はアンチの人と石丸話をしなくなったの。
話が通じないのは、ネット民とテレビ民にしても同じだね。
私は最近、日々のニュースと地震などの大災害があったときにだけテレビを見て、朝から寝るまでもっぱらネットの中をうろついている。よく見るのは「Re-HacQ(リハック)」というサイト。兵庫県知事に返り咲いた齋藤元彦さんや、刑務所に服役していた元法務大臣・河合克行さんなど“スネに傷持つ人”からじっくり話を聞くのが面白くてたまらないんだわ。
だけど、「話題の人の一瞬の表情でいろんなことを語らせるリハックの高橋弘樹さんは天才」と言うと、「そうそう」と笑う人半分、「誰それ」と首を傾げる人半分。てか、ユーチューブなどのSNSと無縁の人は年齢に関係なくいるのよね。
それだけじゃない。
ネットはちょっと調べたことをAIが記憶して勝手に「あんた、これ興味あるでしょ?」と似たようなものをどんどん表示してくるから、ますます狭く深い私好みの沼にハマることになる。そして、いよいよ話す相手が限られてくる。それはそれでいいのかもしれないけど、そんなことが続くとね、そういえば昔はレコード大賞をもらった歌手と一緒に泣き、国民のほとんどが紅白歌合戦で楽しんだんだっけ、なんて言いたくなるのよ。だけど、言いません。人間関係も時代も変わってよし。後ろを見ても、心浮き立たないもんね。
【プロフィール】
「オバ記者」こと野原広子/1957年、茨城県生まれ。空中ブランコ、富士登山など、体験取材を得意とする。
※女性セブン2025年1月1日号