投資の神様ウォーレン・バフェット氏をはじめとして、経営者や投資家の中にはポーカー愛好家は多い。世界最大のポーカーの祭典「ワールド・シリーズ・オブ・ポーカー」(WSOP)で日本人として初優勝した木原直哉氏も投資家としての一面を持つ。
ポーカーと投資にはどういった共通点があるのか。木原氏とエコノミストのエミン・ユルマズ氏との共著『「確率思考」で市場を制する最強の投資術投資』(KADOKAWA)より、株式投資とポーカーの共通点を解説する。【前後編の前編】
株とポーカーの共通点【1】スキルと運、双方の要素がある
エミン:テキサスホールデムでは、それぞれのプレーヤーに2枚ずつカードを配り、テーブルの中央に誰にでも見える5枚のコミュニティカードを並べます。自分の持っている2枚(ハンド)と中央にある5枚、合計7枚のカードのうち5枚で最も強い役を作ったプレーヤーが勝つわけです。自分に配られたカードは見えるけれど、他のプレーヤーたちがどんなカードを持っているかはわかりません。
場にあるカードは順に開いていくのですが、開く前にベット(賭け)をするかどうかを決断しなければなりません。ポーカーはカードゲームというよりカードを使ったベットゲーム、つまり「投資のゲーム」といえますね。
木原:ポーカーは必ずしも強い人が勝つとは限らなくて、初心者や強くない人が勝つこともよくあります。将棋だったら初心者がプロに100回勝負を挑んでも1回も勝てませんが、ポーカーだったらトーナメントでトッププロを飛ばすなんて日常茶飯事だし、運に恵まれれば一晩単位のキャッシュゲームでトッププロに勝つことだって十分可能なんです。だからこそ盛り上がるし、面白い。
エミン:株も同じですね。特別な知識を持たない人がたまたま大儲けしちゃうことはあるし、堅実に増やしていくこともできる。だからいろんな人が参加してくるわけです。うまい人しか勝てない世界なら、こんなに盛り上がらないよね。
だからといって、運に100%依存するわけではありません。もしそうなら、木原さんのようにポーカーで生計を立てる人や、専業の投資家というのは存在できませんからね。
木原:ポーカーでも株でも、瞬間的であれば手元のお金を10倍にする人はたくさんいますが、破綻することなく長期的に増やしていくとなるととても難しいでしょうね。
エミン:ポーカーも株もギャンブルだと思っている人は多いけど、長期的な成果はスキルに依存するので、ギャンブルとはいえないんですよ。運が巡ってきたときに、その幸運をうまく活用して利益を最大化できるかどうかは、スキルに大きく依存します。やっぱりスキルのない人は、運に恵まれたときでも大きくは勝てないことが多いんです。
木原:ダウンサイド(保有資産が損失を受ける可能性)も同じですね。運が悪かったときでも、その負けをできるだけ小さくして耐えられるかどうかはスキルに大きく左右されます。運が悪いときにすべてを失ってしまうような人は、ポーカートーナメントでもあっという間に脱落してしまいますから。
エミン:確かに、運が悪いときでもうまい人はなんとか耐えてリカバリーできるけど、そうじゃない人はそのまま崩れてしまいますね。投げやりになってしまう人もたくさんいます。
これは株式投資でもまったく同じで、うまくいったときには大きく利益を伸ばし、そうでないときはなるべく損失を抑えながら耐える、それができるかどうかがプロとアマチュアの違いであるように感じます。