株とポーカーの共通点【5】プレーすればするほど負ける
木原:ポーカーはマイナスサムのゲームなので、参加者の99%が負けると言われています。勝ち組である1%の人たちは、プレーすればするほど勝ちが大きくなりますが、残りの99%の人はプレーするほどチップを減らしてしまうんです。
エミン:素人がポーカーで負ける最大の要因は、ゲームに参加しすぎることだと思います。ポーカーでハンドが弱ければあえて勝負に参加せずにフォールドする(ゲームを降りる)のがセオリーで、自分のハンドの弱さを認識して多くのチップを出してしまう前に降りる判断ができる人ほど、勝ちやすいのです。
実際、勝ちやすい参加率(VPIP)は15~30%ぐらいだといわれていますよね? ほとんど降りることなくゲームに参加してくるような人がいたら、周りのプレーヤーはみんな「この人からチップを巻き上げられそうだな」とニンマリするよね。
木原:プロなら参加率が高くても勝てると思いますけど、普通の人は無理ですね。参加率を抑えたからといってそれだけで勝てるわけではありませんが、少なくとも普通の人が勝つには強いハンドを選ぶのは最低条件です。
株式投資も同じようなものかもしれませんね。ただ、ポーカーはテーブルに着いてプレーする時点で、アンティ(強制参加費)を取られて勝負を降りている間も少しずつチップが減っていくのに対し、株ならタダで休むことができる。なおさらプレーし過ぎない方が有利だと思います。
エミン:ちょっと古いデータだけれど、1992年から2006年までのデイトレーダーの取引を分析した台湾の論文(2014年出典:Monthly Day Trading Statistics – Taiwan Stock Exchange Corporation 〔twse.com.tw〕)によると、この期間に取引をした45万人のデイトレーダーのうち、利益を出しているのはわずか4000人なのだそうです。上から4000人目以降の人たちは手数料後の稼ぎが2bpsまで下がり、6000人目以降はマイナスに陥っています。
デイトレーダーというのは毎日相場に張り付いて株取引をする人ですが、そういう人ほどお金を減らしやすいということがわかりますね。
木原:ポーカーの場合、なぜプレーすればするほどほとんどの人が負けるかと言えば、実力が結果に与える影響は参加回数に比例するのに対し、運が結果に与える影響は参加回数の平方根に比例するからです。だから回数を重ねるほどに運の要素が相対的に小さくなっていって、結果がプレーヤーのスキル差に比例するようになるんです。
エミン:コインを10回投げても裏と表が5回ずつ出るとは限らないけど、1000回ぐらいになるとほぼ半々になる理屈と同じだね。
ポーカーでは、最初にどんなカードが配られるかは完全に運です。強いハンドが来るまでひたすらフォールドし続けるのはつまらないけれど、プロは我慢して待ちます。彼らは遊ぶためにそこにいるわけではないからです。
投資でも同じで、遊びではなく利益を出したいのなら、トレードをし過ぎてはだめです。勝てない投資家の最大の間違いは、ポジションを取りすぎることなんですよ。