降り積もった雪道を夏用タイヤのまま走行したクルマがスリップし、立ち往生しているニュースを目にすることがあるだろう。突然の降雪とは言え、凍結路や雪道を承知の上で走行したドライバーは、もちろん道路交通法違反となる。そんな状況への備えといえばスタッドレスやオールシーズンタイヤの装着が思い浮かぶが、年に数回程度の雪道走行ならばタイヤチェーンの携行を選択することもあるだろう。中でも最近注目度が増しているのが“布製タイヤチェーン”だ。自動車ライターの佐藤篤司氏によるシリーズ「快適クルマ生活 乗ってみた、使ってみた」。今回は、本格的シーズン突入前に、その使い勝手や性能をレポートする。
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各都道府県には公安委員会が設置されていますが、沖縄県を除く46都道府県では「道路交通法施行規則」または「道路交通規則」によって、積雪時や凍結時における「滑り止め措置」の実施を義務付けています。当然、雪道などの滑りやすい道路でノーマルタイヤのまま走行すれば、公安委員会が定めた規則に反することになり、道路交通法違反。反則金は大型自動車等が7000円で、普通乗用車・自動二輪車が6000円、原付車 5000円です。なにより、立ち往生して交通を滞らせれば社会的な責任を問われたり、交通事故を起こせば、反則金どころでは済みません。
そこで望ましいのは「スタッドレス」や「オールシーズン」といった冬用タイヤを選択すること。最近、四国での降雪もニュースになっていましたし、過去には鹿児島の指宿スカイラインでチェーン走行の経験もあります。確かに年に1~2度ほどの降雪のために高額なタイヤを装着するのはコスパが悪いと感じることも理解できます。しかし冬用タイヤ、とくに「スタッドレスタイヤ」は、路面温度や気温が低くても、柔軟性を保持できるコンパウンド(ゴム素材)を使用しているため、ドライ路面でも“より路面に密着”させることができます。沖縄以外でも冬用タイヤが有効なのはこうした理由からです。
一方で、少々ややこしいのですが、スタッドレスタイヤは雪道や凍結路での性能を重視した設計のため、ドライ路やウエット路での走行では、夏用タイヤに比べると制動距離が長くなる傾向があります。さらに夏用タイヤに比べてゴムが柔らかいため、夏用タイヤよりも減りは早くなります。
こうした弱点を補い、1年中使用できるのが「オールシーズンタイヤ」。夏場の走行にも問題なく使える上、年に数回の突然の降雪やちょっとした凍結路なら走行できるというバランスを優先したタイヤです。ただし雪道や凍結路などでの性能はスタッドレスより少し落ちるため、雪国専用というよりは、降雪の少ない地域用です。