5分もあれば装着は可能
一方で金属製やプラスチック製チェーンに比べ、「装着は楽でも、本当に布製は使えるの?」という疑問を今も耳にします。そこで布製滑り止め「スノーソックス」シリーズの中で価格、性能などでバランスの取れた「スーパー(1万9800円~)」で装着性、雪道での走行感覚、そして性能や耐久性をチェックしてみた。なおスノーソックスには他にリーズナブルな「クラシック(1万3530円~)」、少し性能を上げた「クラシックtype II(1万4883円~)」、そしてもっとも高性能な「スーパーtype II(2万1890円~)」があり、全4種が揃っています。
金属製やゴム・プラスチック製などの滑り止めでもっとも大変なのが装着です。装着に不慣れな上に、寒さや暗がりの中でフェンダーとタイヤの間や裏側に手を差し入れながら、時として泥だらけになりながら装着するときのストレスは相当なもの。その点、布製の「スノーソックス」は「取り付けはわずか3分と簡単」と謳っています。
そこで実際にコンパクトで携帯性のいいソフトケースの中から2輪分の長さ1メートル弱、幅30センチほどの、少し厚手の布チェーンを取り出して装着開始。左右の駆動タイヤの上半分に被せていきます。左右のタイヤの半分に同じように被せたところで、クルマを前進か、あるいは後退させて、タイヤを180度回転させます。これでまだスノーソックスが被っていない面が上にくるので、同じようにタイヤに被せれば装着完了です。
多少ずれていても走行することで正しい位置にセットされるので、心配は要りません。さすがに一本3分は無理でしたが、それでも「5分あれば余裕で完了」といったところです。何度となく付けたり外したりしているうちにコツを覚え、4分弱といったところです。被せるだけの“手軽な装着性”と場所を取らない“収納性の良さ”は、これまでのチェーンとは違った扱いやすさです。
装着を終了したところで100mほどゆっくりと走行したところで一旦クルマを止め、正しく装着されているかを確認。その後にしっかりと発進すると、ほんのわずかにスノーソックスの中でタイヤが空転する感触がありましたが、すぐにグリップを取り戻してスムーズに加速していきます。
乗り心地は“滑らかにして静か”。金属製などにあるガタガタした感覚はありません。テスト車両「日産ノート・オーラ」のモーターによる低速からトルクフルな走りにも十分対応してくれます。特殊繊維で編み上げられた布が雪面にしっかりと密着してタイヤのグリップ力を高めていることをしっかりと感じながら加速や減速を行い、コーナーもクリアしていきます。
布製滑り止めの走り心地は?
装着後の走行感覚は実にスムーズで、金属やプラスチックチェーンのような騒音やガタガタとした振動とも無縁です。ここで守るべきことは、注意書きにもあるように40km/h以下での使用を心がけること。布製滑り止めチェーン本来の性能を発揮し、摩耗を極力防ぐためにも、この制限速度は守りましょう。
実はテスト車両にはブリヂストンの「ブリザックVRX3」が装着されていて、その上にスノーソックスを被せてのテストでした。当然ながらトータルでの使いやすさや実用性の高さ、そしてアスファルト路面での快適性ではブリザックが上でした。
一方で2018年には国土交通省によって、「布製滑り止め」が金属&非金属製チェーン同様に、チェーン規制時の装着対象として認められています。当然、夏タイヤに被せるのはもちろんのこと、今回のようにスタッドレスタイヤにスノーソックスを被せればチェーン規制にも対応できることになります。
ただし、圧雪路になる前のアスファルト路面とシャーベット路面が混在するような状況では、試しに推奨速度「時速40km/h」を超えて走行すると少し滑るような感覚があり、不安を感じました。これは金属製&非金属チェーンでも感じる感覚なのですが、本来の性能を発揮するためには、しつこいですが推奨速度の厳守が必須で、耐久性にも大きな影響を与えることになります。降雪時には自然と交通量全体の速度が落ちるので、40km/h以下でも流れに乗れるはずです。仮に後ろからスタッドレスタイヤを装着した車両などが迫ってきたら、道を譲るぐらいのゆとりがほしいところです。
そして気になる耐久性ですが「イッセ・スノーソックス」の「スーパー」を昨シーズンからテストも含めて雪上を20km少々走行していますが、穴や破れはありません。使用制限速度の時速40km/hを守れば、100kmぐらいは穴も開くことなく使用できた、という報告もあります。また穴が開いてもしばらくは使用できるため、200kmほど使用できたという運送業者さんの報告もありました。新たに加わった「type II」シリーズなら、さらに耐久性は高くなるはずです。
間もなく本格的な降雪のシーズンを迎え、首都圏でも積雪の可能性が高まります。圧雪路での発進、加速、ブレーキング、そしてコーナリングでは不安を感じることなく走れる「スノーソックス」を始め、布製滑り止めを検討してみてはどうでしょう。