しかし、職場での毛髪の色を規制されると、髪の色は簡単には変更できないので、職場での毛髪の色が私生活でも事実上強制され、自由な自己表現ができなくなってしまいます。となると、毛髪の色を黒に限定する規制は過大であり、特にそのことを承諾して入社したような場合を除き、就業規則をもって労働者に要求することには無理があると思います。
例えば、就業規則で労働者の身だしなみや服装を服務規律として定め、これに違反した場合、程度に応じて懲戒等の処分をしたり、人事考課で低評価をすることが見受けられます。もし、娘さんが店の雰囲気を壊す異様な色に染めたのでなければ、黒髪でなかったとしても、そのことを理由に、使用者側が就業規則違反として懲戒処分や不利益処分を行なえません。
【プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。
※週刊ポスト2024年12月27日号