闘う経済アナリスト・森永卓郎氏の連載「読んではいけない」。今回は医療費改革について。森永氏は近年の高齢者ばかり負担が増えるような制度改正は“高齢者いじめ”と疑義を呈する。こうした制度改悪が続く原因は数字を守ることを優先する官僚にあると指摘するが、どういうことか。森永氏が解説する。
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現在がん闘病中の私は、免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」を使った保険診療に加えて、1回の治療費が50万円かかる血液免疫療法という自由診療を併用している。そのほか検査を含めると毎月預貯金が100万円以上減っているのが現状だ。そんなことで、私は3枚のクレジットカードを使い分けているが、うち2枚は毎月の医療費で限度額パンパンになってしまっている。
保険適用下の標準治療でがんと闘うのであれば、「自己負担3割」に加え、所得に応じて一定額以上の治療費が控除される「高額療養費制度」という優遇策がある。
日本が医療に手厚い国であることは間違いないのだが、私のように自由診療に手を出すとそうはいかず、毎月100万円以上の医療費が全額自己負担である。唯一の救いは確定申告の際の医療費控除だが、その上限は年間200万円と決められている。私の場合、たった1~2か月で控除枠を使い果たし、あとは純粋な出費となるのだ。
莫大な医療費がまるまる自己負担となる自由診療と、毎月一定額に収まる保険診療の差はとてつもなく大きい。その事実を身をもって知るからこそ、周囲には保険適用の範囲内での治療を勧めてきた。実際に標準治療だけでがんに打ち勝った人はたくさんいるのだから。
ところが、いま多くの患者にとって頼みの綱である医療費の優遇制度が国に狙い撃ちされている。