中学受験がブームと言われる首都圏でも、8割以上が公立中学校に進み、高校受験という進路を選択している。しかし、親の世代が高校受験した頃とは様変わりしており、合否にかかわる「内申書」の中身や扱いも変化したという。かつては「授業での挙手の回数」や「部活動」「生徒会活動」への参加が評価に関わるとされたが、現在はどうなのか。シリーズ「“中学受験神話”に騙されるな」、フリーライターの清水典之氏が、受験情報の専門家への取材を基にレポートする。【第5回】
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「日本を代表する某大企業の人事の方から聞いた話ですが、これまで採用した社員のプロフィールというビッグデータを解析したところ、圧倒的に公立進学校の出身者が多く、GMARCHや関関同立あたりに進学した人を採用していたそうです。もちろん、会社によると思いますが、理由を考えてみると、公立進学校に入る人は内申書的な優等生で、会社という組織で働く適性が高いのではないかと」
そう語るのは、『中学受験はやめなさい 高校受験のすすめ』(実業之日本社)著者で、Xアカウント「じゅそうけん」で10万8000人のフォロワーをもつ伊藤滉一郎氏だ。伊藤氏の言う“内申書的な優等生”とは、どのような人物像を指すのか。
「学力的にはそこそこ優秀で、決められた期日までに課題を提出するとか、異性とも適切な距離感でコミュニケーションが取れるとか、必要とされたときにリーダーシップを発揮できるとか、学力と社会性のバランスが取れている人で、公立進学校の出身者にはこういう“サラリーマン適性”の高い人が多い。
これが中高一貫のトップ校の人だと、私の知り合いの範囲ですが、極めて学力優秀で頭がいいのだけど、性格的に尖っていたり、コミュニケーションに難があったりで、研究者や医者、弁護士など専門職に向いた人が多いような印象です」(伊藤氏)
これはあくまで伊藤氏の印象で、そうした傾向があるという話に過ぎず、当てはまらない例はいくらでもあるが、頷く人もまた多いのではないか。
私立中高一貫校の中学入試では、受験生の小学校での成績が合否判定に影響するケースは少なく、基本的に筆記試験がメインで合否が決められる。高校受験でも、都内の場合、私立難関校(ほとんどが中高一貫校で、高校からの入学)の入試は、筆記試験がメインで基本的に内申書の影響は少ない。一方、公立高校では入試の合否判定における内申書の比重が高い。この内申書というフィルターを通すと、人のタイプが選り分けられるというのが伊藤氏の主張だ。
その真偽はともかく、内申書というのは、とかく世間の評判が悪い。「授業中、頬杖をついたら減点される」「挙手した回数が多いと内申点が上がる」「体育祭のリレーの選手に選ばれると、体育の評定が上がる」など、本当ともウソともつかないさまざまな説が飛び交っている。真面目に定期テストの勉強に取り組むだけでなく、先生の印象を良くするため、授業や部活、校内行事にも積極的に取り組む姿勢を見せて、良い子としてふるまわないと内申点は上がらないと信じられている。