それでは、予算も時間もないときに、どうすればよいのでしょうか?
あなたは、エレベーターの前で待っている人を観察します。すると、何人かがカバンからふと鏡を取り出して、髪型などを確認していることに気づきます。そしてあなたは次のような画期的なアイデアを思いつくのです。
「エレベーターの近くに、鏡を置けばいいのではないか? そうしたら、オフィスへの出社直前のエレベーターの待機時間を、自分の髪型や服装などの身なりをチェックする時間にしてもらえるのでは?」と。つまり、エレベーター自体を速くする、のではなく、エレベーターを待っている人が、「待っている、と感じないようにする」という発想です。
これこそが「インサイト」的な思考法です。この場合のインサイトである「人を動かす隠れたホンネ」は、「待ち時間そのものが不満なわけではなく、手持ち無沙汰で無駄な時間だと感じてしまうことが不満」ということです。そして、そのインサイトを発見できたからこそ発想された画期的なアイデアが「エレベーターの近くに、鏡を置けばいいのではないか?」です。
※『センスのよい考えには、「型」がある』(サンマーク出版)より一部抜粋・再構成
【プロフィール】
佐藤真木(さとう・まき)/株式会社電通 第3マーケティング局シニア・マーケティング・ディレクター。慶應義塾大学経済学部卒業。2004年、株式会社電通に入社後、主にマーケティングやブランディング、戦略立案に従事。大手クライアントから官公庁、地方自治体、スタートアップまで、100社以上のキャンペーン設計、広報戦略、新商品開発、新規事業戦略、ビジネスデザイン、企業ブランディング、地域ブランディング、アート思考研修などの企画、実施、ディレクションを行う。共著に『場所のブランド論』(中央経済社)、教育講座の執筆協力に『想像力を武器にする「アート思考」入門』(PHP研究所)がある。
阿佐見綾香(あさみ・あやか)/株式会社電通 第4マーケティング局マーケティング・コンサルタント。埼玉県さいたま市浦和出身。早稲田大学卒業後、2009年、株式会社電通に入社。以来、マーケティング・コンサルタントとして、数多くの企業のマーケティング、経営戦略、事業・商品開発、リサーチ、企画プランニングに従事。担当した業種は化粧品・アパレル・家庭用品・食品・飲料・自動車・レジャー・家電など。大手企業だけでなく、ベンチャー・中小企業も担当するなど、幅広い業種・規模の企業を手掛ける。著書に、累計2万部越えのベストセラーとなった『電通現役戦略プランナーの ヒットをつくる「調べ方」の教科書 あなたの商品がもっと売れるマーケティングリサーチ術』(PHP研究所)がある。