責任感や協調性があり、ルールを順守する……。日本人の特徴として、「まじめ」はよく語られるが、「まじめすぎ」はかえって心身の不調を招くことにつながる。そこで大切なのは、「休養」だ。休むことの大切さ、仕事で最高のパフォーマンスを出す方法などについて、休養学の第一人者に聞いた。
根性論では結果に結びつかない
「日本人はまじめというか、強迫観念が強いのではないか」と推察するのは、休養学の第一人者、片野秀樹さん。そこにはなんと、医学的根拠もあるという。
「脳内には不安の抑制作用のある『セロトニン』という神経伝達物質があり、『セロトニントランスポーター』という遺伝子が回収・再利用しています。
この遺伝子には3つのタイプがあり、日本人の約7割は、SS型というタイプであることがわかっています。このタイプは、セロトニンの濃度が低下しやすくなるため、不安を感じやすくなるのです」(片野さん・以下同)
心配性の不安から身を守る手段が、皆と一緒、つまり、和を重んじる生き方だったという。
「一致団結するパワーで、ストレス耐性の弱さを乗り越えてきたんですね」
ただ、重要な場面で最高のパフォーマンスが求められるアスリートの場合、この体質が妨げになることも。
「生まじめな選手ほど、ライバルに置いていかれる焦りや休むことへの負い目で強迫観念が強くなります。すると、不調でもタスク(課題)をこなすことを優先して頑張りすぎ、オーバートレーニング【*1】を引き起こしてしまいます。
【*1/オーバートレーニング:疲労が回復しないままトレーニングを重ねることによって起こる慢性疲労状態】
世界屈指のアスリートが限界までトレーニングを積んでも、そこから先は大した差が出ないことがわかっています。その中で勝負を決めるのは、本番で100%のパフォーマンスが出せるかどうか。その差を分けるのが休養なのです」
根性論では結果に結びつかないというのが、現代の科学的な考え方だ。