カスハラ(カスタマー・ハラスメント=客による従業員への理不尽な要求、暴言や暴力を伴う行為など)が社会問題化する中、これらの行為を禁止する条例制定の動きが東京都をはじめ全国の自治体で加速している。小売店や外食業界を中心とする民間企業でも「カスハラ対策方針」を明確に示す動きが相次ぐが、迷惑客に毅然と対応した結果、「警察沙汰になり、危うく刑務所送りになるかもしれなかった」という居酒屋店主に話を聞いた。
言い争いから顔に唾を吐きかけられた
「事件」が起きたのは今年1月30日。東京・向島の大衆酒場「のみくい処かどや」で初老の男性客と店主(黒かどや氏=@kadoya1)が揉め、110番通報する騒動に発展。その場は収まったものの、後に店主は警察・検察から出頭要請を受け、「暴行容疑」で取り調べを受けることになってしまったという。
黒かどや氏がX(旧ツイッター)に綴った事件の顛末を要約すると、〈初老の男性客と言い争いになった際、相手が店主の顔に唾を吐きかけたため取り押さえ警察が出動〉〈騒動からしばらく経ち、相手が『取り押さえられた際に骨折した』と被害届を提出〉〈警察・検察が動き出し、数か月にわたり任意で事情聴取されることになった〉というものだ。
黒かどや氏は「もの言う居酒屋店主」としてSNS上でたびたび物議をかもしている存在だ。自身のXでも〈クソクレームには毅然とした態度で立ち向かう〉〈(客に)怒鳴られたら怒鳴り返す〉と公言。店のルールに従わない客や、度を越した要求、悪態をつく客は容赦なく退店・出禁を言い渡すスタンスを貫いてきた。
それゆえ客と揉めることも少なからずあるそうだが、今回の一件は「なかなか衝撃的な出来事でした」と当の黒かどや氏が振り返る。
「その男性は『自分はお客様だ!』と終始、高圧的な態度で行儀が悪かったので、注意をしたら言い争いになりました。挙句、帰り際にカウンター越しに唾を吐きかけられたため、逃げようとする相手を店外で取り押さえ警察に身柄を引き渡したんです」