1月20日に米国大統領の就任式を迎えるドナルド・トランプ氏。超大国のトップ同士として中国国家主席の習近平氏と対峙するのは第一次政権(2017~2021年)以来となるが、前回と異なるのはウクライナやパレスチナなど、世界中で「戦争」が起きている点だ。米中の首脳はどう動き、間に立つ日本はどうなるのか。
発売即重版の話題書『あぶない中国共産党』の共著者である社会学者の橋爪大三郎氏とジャーナリストの峯村健司氏が語り合った。※文中敬称略【前後編の前編】
「2年我慢すれば、トランプは簡単に御せる」
橋爪:ロシア・ウクライナやイスラエル・パレスチナの戦争がトランプ2期目でどうなるか。この間、アメリカやイギリスなどNATO諸国は、ロシアやイラン、中国・北朝鮮には反対の姿勢を取るが、同じ権威主義的国家のイスラエルは支持するという、一貫しない態度を続けています。
そうしたなか、これまではアメリカが“よからぬ政権”と判断した相手に貿易封鎖や安保理制裁を科してきた。トランプがそれを変更し、権威主義的国家の戦争を交渉で解決してしまえば、NATOは面食らいますし、国際秩序にひび割れをもたらす可能性があります。
峯村:トランプ1期目で安倍晋三・元首相が警戒していたのは、トランプの安全保障に対する根本的な姿勢でした。“戦争嫌い”のスタンスがあり、それが権威主義体制の独裁者にばれると、抑止の低下になってかえって戦争リスクを高めることを懸念していました。
ウクライナについては就任早々に停戦に持ち込むと見ていますが、問題は停戦後です。平和協定の中身までは考えていないであろうトランプによる“見せかけの平和”で、状況がますます悪化することが懸念されます。
橋爪:戦争を終わらせようとロシアの武力による現状変更をトランプが認めてしまうと、戦争を防ぐというより、かえって酷くする恐れがあるわけですね。
峯村:さらに大きな問題は、トランプ2期目は2026年の中間選挙で共和党が負ければ2年でレームダック化する可能性が極めて高いことです。プーチンや習近平、金正恩から見れば「2年我慢すれば、トランプは簡単に御せる」となる可能性があり、このことが大きな懸案になります。