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「トランプvs習近平再び」の世界を読む

トランプ氏2期目は「2年でレームダック化」の可能性大 プーチン氏・習近平氏・金正恩氏から見れば「2年我慢すれば簡単に御せる」【2025年の国際情勢を見通す鍵】

社会学者・橋爪大三郎氏(左)とジャーナリスト・峯村健司氏(写真/共同通信社、本誌撮影)

社会学者・橋爪大三郎氏(左)とジャーナリスト・峯村健司氏(写真/共同通信社、本誌撮影)

習近平の機先を制したトランプ

橋爪:一方の中国は、トランプ1期目に比べて国内情勢が厳しく、習近平の立場が弱まっています。コロナ対策や不動産不況で中国経済は立ち直る見通しもなく、民心も離れている。その状態でトランプを迎え討つのはなかなか厳しい。

『あぶない中国共産党』でも触れましたが、文化大革命で党中央の過半数を占めたはずの「四人組」が、毛沢東の死後、軍と長老によって「役割は済んだ」と排除されたように、軍や党の大勢が習近平路線がまずいと思えば、排除されていく可能性もあると思います。

 台湾侵攻については、「リスクが大きすぎる」と見る軍に対し、習近平は「どうしてもやる」と政治的に考えている。現場の軍首脳と党中央の意見が食い違い、距離が生まれているとも言います。

峯村:そんな厳しい国内情勢にある習近平と2期目のトランプは、今後どんなディールを始めるかも予断を許しません。

 機先を制したのはトランプのようです。1月20日の大統領就任式に習近平を招待しました。就任式に外国首脳が出席したことはなく、極めて異例のことです。まさにトランプによる「ジャブ」が始まっているのです。

橋爪:なるほど、この後どうなるか見物ですね。

峯村:トランプ当選後、複数の中国側の関係者と議論しましたが、全員が一致してトランプとの交渉に自信を深めていました。1期目の反省を活かして、2期目は十分ディールができると。そもそも習近平自身も、トランプとケミストリーが合うと思っているようです。

■もっと読む:トランプ次期大統領の“対ロシア・対中国ディール”の鍵を握るイーロン・マスク氏 米国内で頭打ちのテスラを中国に売る選択肢も【橋爪大三郎氏×峯村健司氏】

【プロフィール】
橋爪大三郎(はしづめ・だいさぶろう)/1948年、神奈川県生まれ。社会学者。大学院大学至善館特命教授。著書に『おどろきの中国』(共著、講談社現代新書)、『中国VSアメリカ』(河出新書)、『中国共産党帝国とウイグル』『一神教と戦争』(ともに共著、集英社新書)、『隣りのチャイナ』(夏目書房)、『火を吹く朝鮮半島』(SB新書)など。

峯村健司(みねむら・けんじ)/1974年、長野県生まれ。ジャーナリスト。キヤノングローバル戦略研究所主任研究員。北海道大学公共政策学研究センター上席研究員。朝日新聞で北京特派員を6年間務め、「胡錦濤完全引退」をスクープ。著書に『十三億分の一の男』(小学館)、『台湾有事と日本の危機』(PHP新書)など。

※週刊ポスト2025年1月17・24日合併号

橋爪大三郎氏と峯村健司氏の共著『あぶない中国共産党』

橋爪大三郎氏と峯村健司氏の共著『あぶない中国共産党』

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