企業の新卒採用においては“売り手市場”が続いているが、当の大学生の間からは、「年々、就職活動対策は“シビア”になっている」という声も漏れ聞こえてくる。背景には、SNSで乱れ打ち気味に発信される「情報」があり、何が正解なのか、何を信じていいのかわからず、翻弄され、疲弊する学生も少なくないようだ。“就活情報疲れ”した現役大学生の声を追った。
グループディスカッションで横文字のマウンティング合戦勃発
就活生はガクチカ(学生時代に力を入れたこと)の深堀りやウェブテスト対策などに力を入れるものだが、都内の国立大学に通うMさん(21歳)は、「(就活現場で)他大生が口にしていて、ドン引きした」と明かすのは、「横文字の多用」である。
「まだ行く業界を絞りきっていない段階で、練習のために受けたベンチャー企業のグルティス(グループディスカッション)でのことです。お題が“売り上げ向上施策”だったのですが、『シナジー』とか『マネタイズ』とか、はては『KPI』とか、およそ学生生活にはない横文字が飛び交っていて、びっくりしたことがあります。大学の授業の知識で意味がわかるものもあったけど、それでも面食らったというか……。
まだ社会人にもなっていないのに、ビジネス用語を操れるほうが偉い、みたいなマウンティングの空気感が怖くて、一言も喋ることができないまま終わりました。就活のシビアさにとにかく震えました」
ちなみにKPIとは「重要業績評価指標」の略称で、KGI(重要目標達成指標)の達成に必要な要素を分解したものだという。そんな横文字を使う就活生があまり好きではないMさんだが、ジレンマもある。
「正直、言っていることは大したことないんですよ。例えば『ステークホルダー』なんて利害関係者と言えば伝わるし、『アセット』は企業の資産や持っているものと言えばわかりやすい。それなのにあえて横文字を使って、“ビジネスできます風”を漂わせるのがイラッとくるというか(笑)。正直イキってるなあと思うんだけど、そういう人が企業受けもいいみたいなので、ダルいです」(Mさん)