夫婦で幸せな老後を迎えるための準備で重要なのが、「何をいつやるか」というタイミングである。財産の整理から遺言書の作成、住まいのリフォームや墓じまいまで、「失敗しないためには、何歳で取り掛かるかが大切」と語るベストセラー終活博士が解説する。
老後準備の第一歩となる家財の整理について、「始めるタイミングが遅いケースが目立つ」と言うのは、行政書士で終活アドバイザーの松尾拓也氏だ。
「高齢者の相談を受けて自宅を訪問した際によく驚かされるのが荷物の多さです。長年生きていると様々な家財が積み重なりますが、家が物であふれかえった状態は生活の質を大きく低下させます。そして、年齢を重ねるほど家財を整理する気力と体力がなくなり、子供に後始末をさせることになる可能性が高いのです」
松尾氏は行政書士のほかファイナンシャルプランナーやお墓ディレクター1級、相続診断士など多数の資格を持つ終活博士。昨年6月に上梓した著書『「おふたりさまの老後」は準備が10割』(東洋経済新報社)が版を重ねてベストセラーとなっている。
そんな松尾氏が説くのは、老後の準備には「適切な開始年齢」があるということ。
「とくに家財整理の場合、家具は大きくて動かしにくく、本棚など驚くほど重いものです。また、この先必要な物、不要な物を選別する判断力も必要です。老後の『生前整理』ではなく、老いる前に行なう『老前整理』を意識しましょう。具体的にはまだ働く体力がある60歳から始めるのが望ましい」(松尾氏。以下「 」内同じ)
家財整理を始める際のポイントについて、松尾氏はこうアドバイスする。
「思い出の詰まった物は処分しにくいものですが、大切なのは『今使っている物だけを残す』ことです。『まだ使える物』や『将来使うかもしれない物』は、今後使うことはないと考えて思い切って断捨離しましょう」