夫婦で幸せな老後を迎えるための準備で重要なのが、「何をいつやるか」というタイミングである。認知症に備えてやっておくべきことはなにか──“終活博士”として知られる行政書士で終活アドバイザーの松尾拓也氏にアドバイスをもらった。
松尾氏は行政書士のほかファイナンシャルプランナーやお墓ディレクター1級、相続診断士など多数の資格を持つ終活博士。昨年6月に上梓した著書『「おふたりさまの老後」は準備が10割』(東洋経済新報社)が版を重ねてベストセラーとなっている。
終活の際は「信頼できる人」を見つけておくことが大切だ。松尾氏はこう語る。
「頼りになるのが身元保証人です。高齢者施設への入所や病院の入院時などに必要になります。高齢の夫婦はお互いの身元保証人になれないケースや、お互いを身元保証人として施設入所したものの配偶者が認知症になり、その後の身元保証人が見つからないケースが多い。こうした場合、家族や親族、友人などにお願いすることが一般的で、病院や施設のお世話になる前に身元保証人をお願いする人を考えておきたい。具体的には後期高齢者になる75歳になったら選びましょう」(松尾氏。以下「 」内同じ)
厚労省の統計(2020年)によれば、認知症の罹患率は65~70歳で約3%、70~75歳で約4%だが、75~80歳になると約13%まで跳ね上がる。
「認知症になると銀行口座が凍結されるなど手続きに多大な制限がかかります。後期高齢者になるまでに身元保証や財産管理を考えておかないと、終活に思わぬ支障が出てきます」
家族や親族、友人などを頼れない場合、弁護士や司法書士などの士業事務所、一般社団法人やNPOなどが身元保証人になる。
「身元保証人になる人は連帯保証人として、本人が施設費用などを払えなくなった時に肩代わりを強いられるケースがあります。このため知り合いや身内に身元保証人を頼みにくいことも多く、ビジネスとして引き受ける業者に頼むこともひとつの手です」