昨年12月、長崎県在住の主婦、西本尚子さんは、80歳の誕生日を迎えるのをきっかけに運転免許を返納し、それまで25年間、大切に乗り続けてきた「愛車を譲る」ことを決意した。愛車は1999年式(12月登録)の3代目RX-7(FD3S)のマニュアルミッション車。ボディカラーはハイライトシルバーメタリック、その走行距離は約7.7万kmだった。
女性のワンオーナー、年式の割には走行距離も少ないという個体は、まさにRX-7ファンばかりか、スポーツカー好きにとって“極上の1台”だった。それを彼女は「譲りたい」という意思を地元、NBC長崎放送の番組内で発信。すると番組のYouTube動画の再生回数は80万回を超え、400件以上の「希望メール」が届き、多くのメディアも注目した。シリーズ「快適クルマ生活 乗ってみた、使ってみた」。今回は自動車ライターの佐藤篤司氏が、西本さんが「相棒」と出会うまでの愛車遍歴についてレポートする。【前後編の前編】
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昨年の12月で80歳を迎えた長崎県在住の主婦、西本尚子さんは、RX-7のことを「相棒」と呼び、四半世紀の間、ずっと愛情を込めて乗り続けてきました。
「購入した当初は1年ごとに、その後も数年に一度の割で定期的にボディコーティングを施してきました。メンテナンスに関してもすべてディーラーの指示に従い、半年点検を行い、車検などもすべてお任せしてきました。クルマとの相性が良かっただけでなく、ディーラーや営業の方との人間関係も本当に恵まれていたからこそ、ここまで維持できました」
人と人との強い信頼感があったからこそ、きめ細かなメンテナンスが可能になったわけです。これだけでも譲渡される車が「極上品」という事が予想できるし、数多くの応募があったことも理解できます。さらに西本さんは、スポーツカーとは言えサーキットを走ったり、山道を駆け抜けたりと言った走りをするわけでもありません。主婦の日常の足として、整備の行き届いたRX-7は、その生活をそっと支え続けてきたのです。では、なぜ“実用性では不利”といわれるスポーツカーを選択したのでしょうか? それを知るために西本さんの車遍歴を見てみましょう。