昨年、25年乗り続けた愛車、1999年式(12月登録)の3代目RX-7(FD3S)を譲ることを発信し、大反響を呼んだ長崎県在住の主婦、西本尚子さん(80歳)。年式の割には走行距離も少なく、状態の良い車体はRX-7ファンのみならず、スポーツカー好きにとって“極上の1台”だった。この1台は最終的はどのような運命を辿ることになったのか。シリーズ「快適クルマ生活 乗ってみた、使ってみた」。RX-7に出会うまでの西本さんの愛車遍歴を紹介した前回記事に引き続き、自動車ライターの佐藤篤司氏が“西本さんとRX-7の物語”をレポートする。【前後編の後編】
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慣れ親しんだコロナ・クーペのあと、オートマチック車で新たなクルマを探そうとした西本さん。ホンダのRシリーズに興味を持ち、ディーラーのもとに足を運んだ。
「(最初に訪れたディーラーの方は)こちらを中年の女性と見たのかもしれませんが『高いですよ』とか『女性には少々乗りこなすのが難しいかも』などと、まるで子供を諭すように言われたので『じゃぁいいわ』となったんです」
そこで西本さん、諦めることなく「何にしようかな……」と悩んでいる時でした。
「たまたま次男と一緒に見ていたのがアニメ『イニシャルD』。そこでカッコ良さに衝撃を受けたのがRX-7(FD3S)だったのです。とにかくなだらかボディラインに目も心も奪われました。特に鳥の羽を広げたようなテールエンド周辺のボディラインの美しさには、ひと目惚れで、本当にカッコいいと思いました」
さっそく九州マツダ赤迫店に出向き、カタログの表紙に載っていた「ブルーが欲しい」と担当者に話したという。
「ところが担当の方からは『ブルーは飽きがきますよ』と言われました。実に誠実そうな方だったので、アドバイス通りにグレーにしました。今考えると、25年も乗り続けてこられたのは、このボディカラーだったからと、感謝しています」
実際には購入した当初は「10年ぐらいで乗り換えるかも」と考えていたとも。ところがその後、RX-7は生産が中止され「モデルチェンジされた車にするかどうか」などと迷うこともできなくなった。
「それに、走りの気持ち良さは時間が経過しても色褪せることはありませんでした。家の窓の隙間からガレージに佇んでいる“セブン”がチラッと見えるだけでも心が浮き立つんです。そして走り出せば、まるで25年の時間の経過が無かったように、初めて感じた楽しさが蘇ってくるんです。そんなクルマを乗り換える必要なんてありませんよね」