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ビジネス
日本製鉄のUSスチール買収問題

日本製鉄「USスチール買収」に立ちはだかる“米国の反日感情”の正体 「貧困と絶望の舞台」で日本資本が嫌われる理由

USスチールのエドガー・トムソン製鉄所(米ペンシルベニア州/時事通信フォト)

USスチールのエドガー・トムソン製鉄所(米ペンシルベニア州/時事通信フォト)

「ヒルビリー(田舎者)」はよそ者を好まない

 アパラチア山脈の山間、南部ケンタッキー州から仕事を求めて中西部に住み着いた労働者たちをヴァンス氏は「家族」と慈しむ。引用を続ける。

〈貧困は、代々伝わる伝統といえる。先祖は南部の奴隷経済時代に日雇い労働者として働き、その後はシェアクロッパー(物納小作人)、続いて炭鉱労働者になった。近年では、機械工や工場労働者として生計を立てている〉

 彼らはアメリカ社会で「ヒルビリー(田舎者)」と呼ばれるが、とりわけヴァンス氏は「スコッツ=アイリッシュ」の家系につらなるヒルビリーとして自画像を描く。

 彼らは生活習慣や宗教など文化的伝統をこのうえなく大切にする。それと裏表の関係で〈外見にしても、行動様式にしても、話し方にしても、とにかく文化的背景が異なる人やよそ者を好まない〉というのだ。

 改めて書くまでもないが、ヴァンス氏も日鉄による買収にたびたび反対してきた。大戦の勝者と敗者という、もはや自らの体験ではない記憶、過去の戦争の歴史も、アメリカの貧しい地域社会が自画像を語る際の物語の一部として根強く残っている。

 それが日鉄の元技術者が肌で感じたことであり、「US」を冠したナショナルフラッグの買収であればなおさら、かき乱される心情は深いものになる。

 ゴンカルベス氏の発言を受けて、日鉄は「発言から明らかになったのは、同氏の提案は、本買収における日本製鉄の計画の範囲と規模に匹敵しえないということです」というコメントを発表した。勝ち目がないから負け惜しみに暴言を吐いただけなのか、そうではなく何らかの負の感情が労働組合やバイデン政権の判断に影響したのか。

 今後の日本や日本企業がアメリカと向き合う上でも、その実像によく目をこらしていく必要があると思う。

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 現在、「マネーポストWEB」では、日本製鉄側の最大のキーマンである橋本会長のインタビュー記事4本を全文公開している。別記事《【独占インタビュー】日本製鉄・橋本英二会長「USスチールの買収チャレンジは日鉄の社会的使命」、社内の賛否両論を押し切った決断の経緯》などで、海外に打って出て成長にチャレンジする必要性が語られている。

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